ハートブレイカー
そんな私の不敵な思いを、雰囲気から、そしてつながれた手から直哉も感じ取ったのだろう。
小さい体でしっかり立ち、酒臭い男と、厚化粧の女をしっかりと見据えた。

「ママはやるといったらやるんだからなっ!」

その声は、どことなく氷室さんに似てると思った。
まだ声変わりしてないのに。
だったら、言い方かな。それとも雰囲気かな。

だからかな、直哉というより、氷室さんから守られてるような気がしたのは。

私は頭を上げたまま、毅然とした態度で家の中へ入っていった。
直哉も母親の私を見て、同じように毅然とした態度を貫いた。

よし。偉いぞ、息子!

ていうか、私たちは何も悪いことをしてないんだ。
後ろめたい思いや、ビクつく必要なんて全然ない。

それでも私の体は震えていた。
反動か。今頃ショックが来たのか。
私はドアにしっかり鍵をかけると、直哉をギュウっと抱きしめた。

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