誰よりも、君が好き
すると、彼の顔が少しだけ曇った。
…え?
私がそう思ったのと同時に、
「お前には、関係ない」
先ほどまでとはまるで違う、
低く、暗い声で返された。
ビクッと、体が思わず震えるほどだった。
その時は、ただ疑問に思っていただけだったし、
ちょっと匠くんが怖くなって、
後にはなにも言わなかった。
しばらくすると、しょげて下を向いたままの頭上から声が聞こえてきた。
「ほら、着いたぞ。」
…その声は、いつも通りで。
先ほどのことなんて無かったように振る舞う彼を見て、
私も普通でいることにした。
…それにしても、だよ。
「匠くん……ここって……」