暗闇と炎
1、
1.
最初に感じたのは寒さだった。
そして体は思うように動かなかった。

起きなきゃ、今日は学校だ、
でも違和感に気付いた。

静かだった、静か過ぎた、
雑音のない世界は恐ろしく奇妙だった。

あぁ、まぶたが重い。

隼人はつぶやいた。
おれ、死んだのかな、

そっと目を開けた。
立ち上がり周りを見渡す、何もなかった。

自分は裸足で
上下白のスウェットをきている。

辺りは真っ白、奥は霧のようで
どこまで続くかわからないほどだ。

後ろを振り返ると、一つ扉があった。
開けなければならない、

そんな気持ちにかられた。

ドアノブに手をかけると
ひんやりと冷たい。

そのままぐっと奥に押した。
すぅっと開き
隼人は部屋の中へ入って行った。
隼人は驚いた、
部屋は自分が住んでいた家の
リビングルームにそっくりだったからだ。

すごく懐かしい。

気持ちが落ち着くようだった。

「藤内隼人。」(ふじうちはやと)

突然後ろから名前を呼ばれて
どきっとした。

そこには小さな
赤い髪の女の子が二人立っていた。

双子なのか、二人の顔はそっくりだった。

白いワンピースを着ていて
二人の違うところは
髪の長さだけだろうか。

「隼人、なんで…」

一人が言いかけたところで
一人が強く口をふさいだ。

隼人には意味がわからなかった。

「ごめんなさい、今のはなんでもないの。
私たちはここの案内人、私、アル、こっち、ウル」

「そこ座って、」アルが続けた。

隼人が座ろうと椅子に触れた瞬間、
酷い頭痛を起こした。

…っ、

頭の横を押さえあまりの痛みに声が出なかった。
だがそれはほんの10秒ほどだった。
すぐに痛みは消えた。

え…?

驚きが隠せない隼人だったがすぐに
アルが話しはじめた。

「ここは真実を知る場所です。
真実は本人しか思い出せません。私たちはその手伝いをします。」

「ちょっとまって、」

あまりに機械的に話すアルについていけなかった。

「おれ、やっぱ死んだの。真実を思い出すってなに。
おれ、わすれてねぇよ。」

「じゃあ隼人が知ってる真実はなに。」

ウルの目が
哀れみに満ちているのがわかる。
急に怖くなったが隼人は続けた。

「どうして、生きているのか分からなくなった。
だから、自殺した。」

ウルの目から涙がこぼれ落ちた。

何にも染まらない美しい涙だった。

この涙を知ってる。このとき隼人はどこかでそう思っていた。

そして今度はウルが続けた。

「真実は本人しか思い出せません。」

ウルの声が少し震えていた。

この声もどこか懐かしい。

ウルがアルが言ったことを繰り返すのは
俺の今の真実が間違ってるからだ。

少しさむけがした。

「私たちはあなたに真実の断片を三つ質問します。
そのとき、きっとあなたは頭に痛みを感じます。
そして断片の世界へ入っていきます。
あなたはそこで大切なことを見つけて来なければいけません。」

言っていることが全くわからなかった。

なんだよ、断片の世界って…

「では、一つ目の質問をします。」
アルが言った。

アルと目があっているはずなのに
その目はおれをみてない。

「まって、わからない。」

「ここはどこですか。」
アルが冷たく言った瞬間、
あの痛みがやってきた。

何も言えなくなる、でも怖かった、
何かをしなければならないというのが。

だから必死に抵抗した。

「いかない!おれいきたくない!
アル!ウル!助けて…
無理…おれにはできない……怖いんだ…」

「隼人。あなたはここにいるよ。」

アルの目がさっきとは違い、
キラキラしてて自分を真っ直ぐ見てるのがわかる。

あぁ、この目、誰かに似てる。

ぼんやりそう思った。

掴まれた腕にアルの手の暖かさが伝わる。
痛みはだんだん強くなって
アルとウルがよく見えなくなった。

声を遠くに聴きながら、
最後はアルの声が聴いた。

「私たちは待ってる。ずっと。」

ずっと。

その言葉の重さをおれはしってる。

そして痛みが隼人を包んだ。

歯を食いしばり、目を強く閉じた。

涙が流れた。
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