真っ赤なお伽話
「・・・何か、悪い事聞いちゃった?凄い顔をしてるけど・・・」
「ん?いや、気にしなくていいよ、もう既に終わった物語さ。えーその、君の名前をまず教えてくれるかな。」
「斎藤好実。」
名前を覚えられていない事を異にもかけず淡々と返答をする。
「斎藤さんね。まぁ、赤嶺さんの事だ。まったく君の事を恨んだりとかしてないと思うよ。あの人はそういう人だ。」
一瞬だが、斎藤さんの顔が微笑んだような気がした。瞬きをしたら見逃すような時間であったが・・・それは、確かに普通の少女のそれで・・・まだ、こっち側に沈みきってない笑顔だった。
「あ・・・あたし・・・何か、赤嶺さんにできる事・・・ないかな?」
「んー。仲良く話し掛けてあげたら?僕はちょっと変だから普通の人の神経がわからないんだけど、普通励まされたら嬉しいんじゃない?」
「な・・・なんて話し・・・かければ?」
そんなの知った事じゃない・・・僕は、パンを取り出し一口食べると斎藤さんに差し出す。
「食べる?」
「あ、はい。」
僕はひとかけ取り斎藤さんに差し出す。
「こんな感じで良いんじゃない?」
「あ・・・」
「人とのコミュニケーションなんて難しく考えない方が良いよ。お母さんとかと話す時みたいに、赤嶺さんに話し掛ければいいんだよ。」
何て偉そうな事を僕ごときが言って良いのか分からないが・・・
しかし、斎藤さんは何かを決心したように頷きすっと立ち上がる。
「あ・・・ありがとう!」
「いいえ。それじゃあ、赤嶺さんを慰めてあげてね。」
斎藤さんの後ろ姿に僕は手を振った。
・・・今更、人のために何かをしようとする気持ちが僕にはあったのか。昔の事に対するささやかな贖罪でもしてるつもりなのだろうか?
ーーーーーソンナコトデオマエノツミハキエナイ。
ハヤクアキラメテスベテヲヤメロ。
「あと、もうちょっと待ってよ。」
僕は煙草に火を点け煙をゆっくりと吹き出す。紫煙が風の流れに沿って消えていった。
「・・・ありがとう・・・ね」
< 15 / 55 >

この作品をシェア

pagetop