真っ赤なお伽話
うちの高校は第一校舎から第三校舎まであり、僕のような二年には、三階建ての第二校舎があてがわれている。校内はいかにも私立といった感じの内装で、ガラス張りの廊下には燦々と日が差し込んで夏場のせいか肌がジリジリと焼けるようだ。
そんな事を考えつつ、屋上で食事を終えた僕は三階の自分の教室に向かっていた。暑さに疲弊しつつ教室に入ると、何やら緊迫した空気である。
窓際の後ろから二番目の席・・・つまりは、赤嶺さんの席の所に赤嶺さん、斎藤さん、そしてギャル三人組が二対三の状況で向かい合っていた。
ギャル三人組は全員が怒りに染められ顔を赤くしているのに対し、二人が冷静な顔つきなのが印象的であった。
「キモ美のくせに、何しゃしゃってんの!?」
「・・・しゃ、しゃしゃってるって言うか・・・あ、あなた達が赤嶺さんの机の上の物ぶちまけたでしょ・・・」
「はぁ!?わざとじゃねぇーしぃ。」
その言葉の後に三人が笑い声を上げてるところを見ると、わざと、らしい。
赤嶺さんは、すっくと席から立ち上がりギャルの一人の顔の三センチぐらいの距離まで切迫する。あと、一歩でも動けば体が触れ合うぐらいの距離。二人の間に三センチの不思議な空間ができる。そこはサンクチュアリ(聖域)のようで両方とも微動だにしない。
「な、何よ!」
赤嶺さんの射抜くような視線に耐えきれずギャルが金切り声をあげた。
「楽しい?」
「はぁ!?何が?」
「こんな事をして、何が楽しいの?人に嫌がらせして。それより、仲良く話したり遊びに行く方が楽しいと思う・・・よ?」
赤嶺さんは、柔らかく微笑む。その微笑みはとても優しく・・・そして、とても悲しそうだった。
ギャル三人は、赤嶺さんのセリフに戸惑いそのまま各々の席に戻っていく。
「かっこいいね、赤嶺さん。」
僕は席に着き、赤嶺さんに話しかける。斎藤さんも席に戻ったようだ。
「そ、そんな事ないってぇ!英吉君に褒められるて照れるよ!」
両手を顔の前で振り恥ずかしそうに否定する様は可愛いと言えなくもない。
朝の出来事の傷は多少癒えているようで、その笑顔はいつもの明るく向日葵のような、目障りな笑顔であった。
「元気そうで何よりだよ。」心にもないセリフを吐き出し、珍しく僕は教科書を取りだし授業を受ける事にした。
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