真っ赤なお伽話
今回で一番恐ろしいのは何を隠そう、坂東しずるであった。この女は三人の中の詳しい力関係、過去などを教える代わりに自分には手を出さないように提案してきたのだ。それも…それも赤嶺さんが死ぬ前日にだ。当然、その時誰も…きっと当の本人赤嶺さんでさえ自殺するとは分からなかった。しかし、この女・坂東はきっと全てを予想していたのだろう。赤嶺さんが死ぬことでさえ。そして、菊を置いたのも坂東さんであった。置くことによりどのような意味があったかはいうまでもあるまい。
「このICレコーダーは教員に提出するよ?」
「ええ、任せるわ。あの二人は私のことを信頼しているからどうせバラさないでしょうし。私は、彼女達を『信用』しているわ。」
信じて『頼る』のと、信じて『用いる』。この差はかなり大きい。屋上から金切り声が聞こえてくると、坂東さんはあざ笑うような表情を浮かべ無言で階段を下りていく。


三日後、富野さんと為定さんは公立高校に編入した。当然、坂東さんも疑われはしたが二人が口をそろえて
「しずるは関係がない。悪いのは…」
と言ったためお咎めは無しであった。
坂東さんは学年における成績が一位になった。意外な事実であったが、坂東さんと赤嶺さんは学年の一、二を争う優等生だったらしい。まさかではあるが…このことまでも見越して…
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