イケメン無愛想S男子と契約を





静かな廊下。


辛くて呼吸が曖昧になってきて目には涙が浮かんでいた。





...ーーータンっ




ふと、その時、後ろに気配を感じた。




「.....っ!?そ、そらくん!?」




あわてる彼女の声とともに解放される体。



「あのさ、俺の彼女をいじめないでくれる?」



「ぇ...」





.......曽良さん?


嘘。でしょ。

今曽良くんって...。




「どうして...曽良くんが。」



「いいから離れろ。こいつは俺のもん。」



彼の存在を見るか否や

私の視界はぼんやりとして立っていられなく体勢を崩す。



「っつぶねーなっ。しっかりしろ。」




背中に感じる温かいぬくもり。


彼の太い手が私の腰をしっかりと掴んでいた。




「ぁ....曽良さん。ごめんな....ひゃっ!?」





まだ意識がままならない私を彼は強く抱きしめた。



涙が、ひっきりなしにほおを伝い始める。




「いいから、去れよ。ゆりに手出しすんな。」




頭上から聞こえる彼の声。

私はぎゅっと彼の胸板においた手に力を込めた。





「......ちっ。どうなっても知らないから。」



美里は諦めたのかここを後にし、
段々と彼女が廊下を行く音は消えていった。





「ったく世話の焼ける。」




「...ごめんなさい」




まさか.....まさか助けにきてくれるなんて思わなかった。



.....俺の彼女だなんて言ってくれるなんて





「ま、俺がいれば心配ないから。一時間休みな。」




「ぇ。」



聞いたことにない優しい声が頭の中でループする。




彼は私の体から少し離れると、
頭を軽くポンポンと叩いて小さく笑った。




「...お前、一応休まなきゃダメだろ。」




ほら。と私の首に人差し指をツンと当てた彼。



確かに、まだ少し息苦しい。

首もヒリヒリする。




「.....あ、りがとう...ございます。助けてくれて、色々」



「うん。」



「...あと、あの」



私はやっぱり曽良さんが好き。


私を助けてくる曽良さんが

たとえ、契約のうちだと言われても私は、この彼の行動を大事にしたい。



「さぁ、行くよ?」




「えっ!?ちょっとまって!」




私が告白する事を、彼はわかっていたのか、

強引に私の手を引くと廊下を走り出す。




「ほらー早くしないと先生に見つかっちゃうよ!」




「ちょっ!まっ!息がっ!げほっごっ」




あまりに急に走り出すもんだから、さっきの事もありむせる。





「...は?走れよ。はーやーくー歩くなー」




「だっ!待っさっき私のこと心配してくれっげほっごっ」



「余計なこと言おうとしたから取り消し。」



そう言いながら、彼は中庭の方へ私を引っ張っていく。




途中、本鈴がなり私は人生二度目のサボりを迎えることになった。




「余計なことじゃない!曽良さんがす...」




きなんです。



なんて言葉も、彼の人差し指が邪魔をした。



ピンと唇の前に立てられる。




「これ以上は、」




な?、と立ち止まった彼に目で威圧をかけられる。






.......なんで駄目なんだろう。




ふとした疑問が
もやもやと渦を巻いた。








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