いと。

会計を済ませ、薬を受け取り、病院を出たのは昼近くだった。

思ったよりキツイ検査もあったせいか疲労感もピークで、数メートル先のタクシー乗り場さえ遠く思えた。


………動きたくない 。


自然と足が止まり、柱に寄りかかるようにして溜息をついてしまう。

「………はぁ。」


その時だった。


「…っ!」

手元の荷物が急に軽くなったと思うとふわりと嗅ぎ慣れた空気が鼻を掠めた。

見上げた先には……愛しいひと。

「……薫。なんでここに………?」

一瞬で胸が締め付けられた。

とっても、会いたかったから。

でも、こんな…みっともない私を見られたくなかったのに。

どんな顔をしていいかわからない。

思わず俯いてしまうと、

「帰るよ。おいで。」

柔らかくてあったかくて甘い声が降ってきて…、

私はそのまま車に乗せられ、自宅へと連れられた。


< 115 / 561 >

この作品をシェア

pagetop