いと。

仕事も権力も失い家に居場所がなくなった曜のお父さんを突然海外に住むお母さんが迎えに来たのは一週間ほど前のことだった。

私たちには知らせずにすぐ連れ帰るつもりだったお母さんと話ができたのはほんの少しだけだった。

「曜、愛さん。バカ亭主が本当に辛い思いをさせたわね。これからは私が見張るから…幸せになって。

赤ちゃん……産まれたら教えて。」

そう言って申し訳なさそうに微笑み、私のお腹にそっと触れて去っていった。

曜に似た切れ長の目を持った上品な女性だった。


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