常務サマ。この恋、業務違反です
そんな状況は、私のデスク(?)だけじゃない。
この執務室の主、高遠さんのものらしい立派なデスクの上も同じ状況。
付け加えればデスクの上だけじゃなく、周りを覆い囲うように床にも小さな山を作っている。


山になっていればまだマシ。
雪崩を起こした書類がデスク前の簡易応接セットの前まで広がっているし、応接セットには分厚い書籍がデンと積み上げられている。


デスクの脇にちょこんと置かれたダストボックスは空だった。
きっと、オフィスビルが委託している掃除業者が入っているんだろうけど、さすがにこの執務室を片付けるまでの委託はされていないだろう。


そして、今日私に託された業務は、この執務室の掃除。
あまりに予想外の惨状に、一瞬眩暈がした。
こりゃ、確かに一日かかるわ……と納得した。


応接セットの上の書籍を書棚に戻すだけでも、英語、日本語、その他言語に分かれていて、どこに戻すのかすらわからない。
きっとこの膨大に散らかった書類も、日本語だけじゃないことだろう。
何をどう纏めて所定の場所に戻すべきか。それ以前に、所定の場所はどこなのか。


妙な敗北感を感じながら、私は山を崩さないように慎重に足を踏み出して、とりあえずスーツの上着を脱いだ。
バッグと一緒に執務室の隅っこの床に直置きして、袖のボタンを外して腕捲りした。


なんか、この惨状を見ただけでも、スタッフが定着しない理由になるんじゃないかと思える。
いや、これも業務の許容範囲内なのか……?


頭の中で『?』がいくつも飛んでいたけど、私は深く考えないように、今自分に与えられた仕事だけを進めようとした。
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