常務サマ。この恋、業務違反です
誤魔化しはきかない。
私がそう考えた理由を加瀬君に理解してもらう為にも、今の私の気持ちを隠すことなく報告しなければいけない。


「ごめんなさい! 私……っ」


勢いに任せてそう叫びながら、私は大きく頭を下げた。
よほど驚いているのか、加瀬君は呆然と私を見つめたまま、ただ絶句している。
そして、私が頭を上げる前に、


「……マジかよ……」


溜め息と一緒に掠れた小さな声を漏らした。


目を伏せたままで恐る恐る顔を上げた。
そのまま何も言わない加瀬君の反応が怖い。


私は躊躇いながら目線を少しだけ上向けて、加瀬君を窺い見た。
加瀬君は大きく開いた手の平で片目を隠しながら目を閉じた。
そして、はあああっと深い深い息を吐いて、ソファのシートに沈み込む。


「……ごめん、なさい」


加瀬君のそんな反応に、謝罪の言葉しか頭に浮かんで来ない。
逃げるように顔を俯けて膝の上でギュッと手を握って、私はただ何度もごめんなさい、と繰り返した。


「……この間葛城と会った時……なんとなく嫌な予感はしたんだ。
昨日高遠さんと実際に顔合わせて、その予感はますます強まりもした。
でも、そっか。……そうなっちゃったか」

「ごめん……。ごめんなさい」


このままどこかに消えてしまいたいとすら思った。
ギュウッと力を籠めて目を閉じると、目尻に涙が滲むのを感じた。


「……葛城、もういいから顔上げろ。って言うか、葛城を責められることじゃないし、人の気持ちばかりはどうしようもないよな。
……まあ、そういう関係になる前に話してくれてた方が対処のしようもあったし、もう少し待って欲しかったっていうのが本音ではあるけど」

「……ごめんなさい」


そう言いながら、グッと涙を堪えて顔を上げた。
< 171 / 204 >

この作品をシェア

pagetop