常務サマ。この恋、業務違反です
お互いに張り詰めた表情のまま顔を向かい合わせる。
そして。



「……って言うか……謎だよな」


会議室の重たく沈んだ空気を払拭させるかのように、加瀬君は軽く首を傾げた。


「え?」


加瀬君の言動に私もつられて首を傾げると、加瀬君は大きくソファに凭れ掛かった。


「今までの歴代スタッフじゃなくてどうしてお前がいいのか、全くわからん」

「……は?」

「自分自身が完璧だからこそ、女の好みに欠陥があるのかな」

「……ちょっと加瀬君、それ、どういうことよっ」


あまりの言い草に声を上げた私に、加瀬君はフッと笑った。


「その調子。多分……高遠さんはお前のそういうとこに惹かれたんだと思う」

「えっ」


突然目を細めてそう言われて、私は思わず口籠った。
頬が熱くなるのを感じてぎこちなく目を逸らすと、加瀬君はゆっくり立ち上がった。


「なんて言うか……。バカみたいに前向きで明るいとこ?
きっと、そんな女、あの人の周りにはいなかっただろうから」


決して褒められてる訳じゃないとわかってる。
だから私は頬を膨らませたまま、加瀬君を睨み続けた。
そして、加瀬君は肩を竦める。


「とりあえずこっちは俺に任せて、お前はこれまで通り任務に就いて。ただし……」


つられて腰を上げた私に、加瀬君は言葉を切ってから改めて真っ直ぐ視線を向けた。


そして、


「くれぐれも、慎重に」


目力籠めて付け加えられた言葉に、私は大きく息を吸ってから静かに頷いた。
< 173 / 204 >

この作品をシェア

pagetop