常務サマ。この恋、業務違反です
この年度始めから、到底予想外のことばかりが続いた。


業務命令で他社に派遣として潜入することになって、たった一ヵ月足らずで私は航平と恋に落ちた。
そして、私はこれまで勤め上げた会社を退職する。
年末を迎える頃には、航平はアメリカに異動する。
それまで航平の秘書として勤めることになって……その後は空白だ。


どうしよう、って思ってた。
どうなるんだろう、って不安だった。


航平は、そんな私に絶対的な道標を与えてくれる。


答えとか、そんなことを考える前に、


「……私、やっぱり英語勉強しないと」


思わずそんな言葉を吐いていた。


航平がゆっくり私を見つめる。
その視線を一身に感じながら、私は航平から目を逸らした。


「……アメリカの女性は、多分日本以上に積極的だろうし……」


俯いてそう言った私を、航平がギュッと抱き締めた。
その胸に顔を埋めながら、私はいいようのない幸せに浸ってしまう。


「……俺、信用ないんだ?」


からかうようなそんな言葉。
そうじゃないけど、と私は言い返す。


「四六時中傍にいていいなら、その方が安心」

「……はっ」


私の返事に、航平は短く息を吐いて笑った。
そして、私を抱く腕にギュウッと力を籠める。


「それなら、もう逃がしてやらない」


低く消え入って行く声。
それを耳に木霊させながら、私は航平の温もりに堕ちて行った。
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