常務サマ。この恋、業務違反です
「は?」

「奢ってもらいたいって言うんじゃなくて。高遠さんに近付きたくて?ってこと」


自分でも迷いながらそう答えると、一瞬黙った後で、加瀬君は盛大な溜め息をついた。


「はあああ……。なんだよ、それ」

「ごめん。私のただの妄想だから。ちゃんと確認する。それから報告するから」


自分で言っておきながら、嫌なこと言っちゃったな、と、私は肩を竦めた。


「でも、葛城の勘が正しいとしたら、それは高遠さんにしかわからないことだろ。どうやって確認するつもりなんだよ」


意外に鋭い質問を放つ加瀬君に、私は一瞬言葉に詰まった。


もしかしたら聞き出せるかもしれない。
そんな勝算もあったし、仕事を怠けてるって思われるのが癪でつい報告してしまった。
理由をちゃんと説明しないと、加瀬君は私への疑心を深めるだけなのに。


「……ここ数日、高遠さんと一緒にランチ摂ってるの」


誤魔化しきれない、と思って言った言葉に、電話の向こうで加瀬君が一瞬絶句した。


「は?」

「今までは業務中しか関わりなかったけど、休憩の時も一緒だから。
……なんて言うか、少しは砕けた会話も出来るようになって来た、って思う」

「ちょっと待て。今までのスタッフがたかってたからって、お前まで同じことしてたら、相当問題なんだけど!?」


予想通り、憤慨した声が耳に届いて、私は大きく息を吸った。
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