雨上がりの虹のむこうに
「すごいね。圧倒される」


 多少落ち着いた山並さんがぽつりと呟いた。


「忙しい方ですから、今日会えたことはラッキーなことなんですよ」

 
 オーナー自身が月に一度は視察をすると決めてはいても、他に急ぎの用があるなら、そちらを優先させることもある。

 こう見えてもこの会社はきちんと利益を回収できる優良企業であるし、オーナー自らが経営方針についていちいち口出ししなくても利益をあげている。

 そんな状況でありながら、仮契約とはいえ会ったその日のうちに契約を結べたことはラッキーだと言える。


「そうだね。ラッキーだ」


 そう言った顔がわずかに歪む。気づかなければ、顔をしかめているようで、笑っているようには見えない。でも声の感じから笑っているのだとわかった。
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