雨上がりの虹のむこうに

『出てこれる?』

 電話の声を拾うなり、手はテーブルを片付けていた。すぐに席を立てるようにトレーに飲み物を置いていたし、ガムシロップやミルクもトレーの上にまとめて置いていた。


「大丈夫です。今どこですか? 」


『お店の前まで来たところ。あんまり駐車出来ないから、すぐ出てこれる? 』


 片手でトレーを片付けながら、足早に店を出ると少し行った先に白いベンツが止まっていた。

 近づいていくとドアから長身の男性が滑るように出てきた。

 振り返るようにこちらを見て、にっこりと笑顔をつくる。彼は私の勤める施設のオーナーである皆藤隼人さんだ。


「おまたせ、優ちゃん」

「大丈夫です。ちっとも待ってませんから」


 相手が笑顔なのに緊張してしまうのは、無駄にイケメンだからかもしれない。それに、二人で会うのも久しぶりになる。

「敬語、止めよう。僕のことは、ずっと前から知っているでしょう? 」

「でも…立場が違いますから」

「いつもそう言うんだね、優ちゃんは。僕は幼なじみとただ食事がしたいだけなんだから、それはやめて」

「……はい」
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