雨上がりの虹のむこうに
 慌てて席を立った店長が、山並さんの紹介をする。

「こちらはフリーのカメラマンの山並鉄二さんです。飛び込みでブライダル写真のカメラマンをしたいとのことでしたので、オーナーにお伺いをたてるところでした」

 
 店長に続いて席を立った山並さんが、名刺入れから名刺を抜き取り店長へと渡す。

「ご紹介いただきました、山並鉄二です。こちらへは初めて伺いましたが、歴史を感じる建物ですね」


 名刺を交換しながら、オーナーも人の良い笑顔を浮かべる。


「古いとはいえリフォーム業者を入れていますから、内装などは営業に支障なく整えてもらっています。もとは大使館だったものですが、遺産分割で自分が相続したけれど住むには大きすぎたものですから、こうしてブライダルや貸し出しのスペースとして利用させてもらっています」


 またにっこりと微笑むさまは、若くても青年実業家だ。見た目の華やかさではわからないけれど、この建物はサイドビジネスであって、他にも経営している会社がある。

 これでもオーナーは経済雑誌の表紙を飾れほどの経営手腕はもっている。ただ見た目が華やかなだけのお飾りではない。時折、悪戯な気持ちが出るのか無能な振りをすることもあって回りを慌てさせる。
< 6 / 113 >

この作品をシェア

pagetop