雨上がりの虹のむこうに
「お茶をお持ちしました」

 声をかけると店長の眉が、ぴくりと上がる。これは機嫌の悪い時の癖で、内心びくりと縮みあがるものの、表面上にこやかにお茶を出すことができた。

「品川君、山並さんをお待たせしてはいけないじゃないか。すぐに僕からもオーナーに確認をとってみよう」

 お茶出しをしながらちらりと確認したテーブルの上には、すでに撮影素材のファイルが広げられており、簡単な説明までもが済んでいる様子だった。

 広げられたページには明るい日差しのなか満面の笑顔で笑う少女と、外国のウエディング雑誌にあるようなモノクロのしっとりとした雰囲気のカップルが映し出されていた。


 あーー私が一番最初に見たかったのに。このまま山並さんの件を店長に引き継いでもらったなら、私は関わることがなくなってしまう。

 この熊みたいな人が、顔を歪めるようにちょっと笑うのをもう見れないのかも……

 それは残念ではあるものの、店長の様子からは不採用の雰囲気は感じられなかったので、まだわからない。

「こんにちは。店長、品川君。こちらの方を僕にも紹介してもらえるかい」

「オーナー」

 声のしたほうに振り返ると、にっこりと笑顔を作ったオーナーが背後に立っていた。

< 5 / 113 >

この作品をシェア

pagetop