雨上がりの虹のむこうに
舞台の裏側
お式のある日は、黒のパンツスーツに決めている。髪もまとめて夜会巻きにする。
インカムを付けて、きちんと使えるかテストするのは、ほんの些細なことだけれど、儀式めいてみえる。
「品川です。これから篠山様と内田様の挙式サポートに入ります」
「OK」
「はい。花嫁の内田様は支度が整いました」
「…了解」
同時に御山さん、メイクさん、山並さんから応答がある。
なんだか些細な返事でさえ山並さんらしいと思えば、自然と笑みが浮く。
花嫁を伴い挙式前の撮影をするため、スタジオに待機している山並さんの所まで向かう。自分の気持ちに気づいてから山並さんに会うのは初めてで、無駄に緊張して体に力が入ってしまう。
ドアを開けて花嫁を引き渡すと、待ちわびていた新郎とはやくも幸せオーラがダダ漏れてきて目のやりばに困る。
今までは、ただただ微笑ましく幸せのおこぼれにあずかっていたのに、自分の気持ちを自覚してしまうと、他の人が言わないだけで、自分もこんなふうに気持ちをダダ漏れにさせているのかもしれないと恥ずかしくなる。