会社で恋しちゃダメですか?


扉があいて、山科が部屋から出て来た。園子の姿を目に留めると、ほっとしたような表情を浮かべる。それから背筋を伸ばして、会議室へと歩いて来た。


「みんなそろってる?」
「はい」
「じゃあ、やろうか」
山科はいつも通り自信に満ちた態度で、会議室へと入って来た。


灰色の壁に、使い古された机。パイプ椅子はどれもこれもがたがたと安定せず、ところどころ破れて黄色の綿がでている。
社員の視線を一身に集めて、山科が椅子を引いて座る。


やはり、この会社には似合わない人だ。
TSUBAKIの息子だ。


みんなの顔に、そんな思いが現れる。


「あがってきている報告書に目を通した。順調だな。もうすぐ工場も稼働するし、そろそろ宣伝しよう」
山科がそう言うと、システム部の戸崎が「あの」と手をあげる。


「噂を耳にしました」
口火を切った。


ボールペンを持った手がとまる。山科はゆっくりと顔をあげ、戸崎の顔をみつめた。
「なんだろう」


「部長は、TSUBAKIの社長の、ご子息なんですか?」


会議室に、息をのむような空気が立ちこめる。


「そうだよ」
山科は肯定した。


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