会社で恋しちゃダメですか?
「このプロジェクトは、TSUBAKIの思惑をかわして、竹永を生き残らせる、そういうプロジェクトなんですよね」
経理部の野田が身を乗り出した。
「そうだ。竹永社長にも了解を得て、僕が全権をゆだねられている」
「竹永社長はご存知なんですか? 部長がTSUBAKIの人間だっていうこと」
「ご存知だよ」
「竹永社長をも、だましてるんじゃないですか?」
戸崎が、語気鋭く問いただす。
「だますって?」
山科が冷静に返した。
「本当はこのプロジェクトもTSUBAKI の思惑の一つで、竹永を飲み込もうとしてるんじゃないですかっ」
戸崎が大きな声で訊ねた。
「違う」
山科は否定する。
「それをどうやって信じろというんです? 部長はTSUBAKIから来た人ですよ。ここでの情報が流れていないって、どうやって保証するんですか。だいたい、竹永の名前を残そうとすることに、部長はなんのメリットもないじゃないですか」
経理の野田が言う。皆は「もっともだ」といわんばかりに、うんうんと頷いた。
部長を信頼して集まった人たちが、瞬く間に離れていく。園子はその様子を信じられない気持ちで見続けた。こんなにあっけなく、すべてが壊れてしまうものなんだ。
「あのっ」
園子は思わず手をあげた。