会社で恋しちゃダメですか?


扉を開き、壁のスイッチを押す。パチンパチンと小さな音をたてて、蛍光灯がついた。


部屋の中の、彼の気配。
園子はいつも山科が座っているところを、じっと見つめる。今はいないけれど、じっと見続けたら現れるんじゃないかと期待して。


「書類、ありがとう」
そうやって、園子に笑顔を見せてくれるんじゃないかと、強く祈って。


しばらく扉のところで立ち尽くしていたが、軽く溜息をついた。自分の惨めさと滑稽さに、思わず自虐的な微笑みが浮かぶ。


園子は書類をデスクの上に置くと、再び立ち尽くす。それから椅子に腰掛けた。


右側に飲みかけのミネラルウォーター。半分くらい減っている。園子は手を伸ばして、飲み口のところをそっと指でなぞった。


そこに園子の携帯が震えた。
見ると紀子からラインが入っている。


「大丈夫? 元気出して」
それから、ファイトのスタンプ。


園子は少し微笑んで、「ありがとう」と送り返した。


そして、恐る恐る、今日の記事を見てみる。芸能欄ではなく、経済欄にあった。


「TSUBAKI化粧品の後継者をお披露目。話題のモデルと共に」
リンクをクリックすると、写真が大写しになる。


あ、笑ってる。


山科とあおいが並んで、笑っていた。先日の険悪な雰囲気が嘘のように、寄り添って立っている。


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