カムフラージュの恋人
仕事が終わる時間が合えば、ごはん食べに行ったり、雅彦が「お客さんからもらった」チケットで、プロ野球の観戦に連れて行ってもらったり。
かと思えば、「シフトの都合でゴミ出しできないから(雅彦が住んでいるマンションは、ゴミ出しの時間が決まっているらしい)、代わりに出しといて」と、朝の7時直前に、わざわざ私んちまで言いに来た上、鍵までくれたり!
・・・もちろん、後日ちゃんと返したけど。
合鍵なんて作らずに。

「終電乗り損ねた」と言って、うちに泊まりに来たこともあった。

『実家に行きなさいよ!ここから近いでしょ』
『夜遅いから二人とも寝てる』
『私も寝てるとは思わないのかーっ!』
『起きてんじゃん』
『起こされたのよ、あんたにっ!』

・・・結局、ヤツにはソファで寝てもらったんだよね。

その頃私は、雅彦のことを、単なる幼なじみとしか思ってなかった。
半年ほど前のあの日まで、私は雅彦のことを、恋愛対象として見てなかった。

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