溢れる手紙
龍が言ってた言葉は、私の気持ちと当てはまっていた。いつまでも、クヨクヨしていられない…あたし、大事な事逃げてたんだって今頃になって気づかされた…だから、大切なものも失っていっちゃうんだ。やっぱり海ちゃんをほって置けないよ…これがあたしの答えなんだ。頭の中で理解が出来た。
「ね、海ちゃんの病院どこ!?」
必死に龍の肩を揺らした。
行き先を教えてもらい走ってそこの病院へと向かった。待っててね海ちゃん…一人にさせてごめん。辛かったよね…あなたは、最後の最後で強がっていた。本当は、凄く凄く寂しがりやなのに、それは一番この私が分かってる。あたししか居ないんだ。海ちゃんを支える事が出来るのは…
病院の中へ入って、看護師さんに部屋を聞いた。501号室…
「ハァハァ…」
503…502。
「501…あった…」
開ける前に、息を整えた。ドアノブを握ってそっと開ける。
ガラーッ
久しぶりに見る海ちゃんの顔。
久しぶりに見る海ちゃんの横顔。
全てが懐かしく感じる…あの日から今日まで全然変わらない。窓が少し開いててそこから爽やかな風が海ちゃんの髪を揺らす。
海ちゃんは、寝てた。テーブルの上には何やら鉛筆と、紙が置いてある。
「なんだろう?」
気になって、そっとその紙を手に取った。
「白紙か…」
呟きながら、独り言を発した。虚しさだけが残る。なんで、これが置いてあるんだろう?しかも、手紙用の紙だ。誰かに手紙でも渡すつもりだったのかな?なんか、知ってはいけないような気がしてきた…
それより、私は海ちゃんと話しがしたくてここに来たんだ。早く起きないかな…
夜になっても海ちゃんが起きるのを待っていた。私も、なんだか眠くなってきて睡魔に襲われた。
ハッ…
ぱっと目があいて、周りを見渡した。
「あれっ?」
気がついたら、あたしはベットに寝ていたのだ。横には、海ちゃんがいる。多分、昼頃だと思う。太陽が激しく輝いて、カーテンの隙間から光が照らしている。
おそるおそる海ちゃんの顔に指先で触れようと手を伸ばそうとしたとき、海ちゃんの目がゆっくり開いたのだ。
あたしの方に顔を向けてるからすぐに目があった。
「あっ、その…」
あたしはなんて言っていいのか分からず言葉が出ずに息詰まっていた。
すると、伸ばしていた手をいきなり握って真剣な眼差しであたしを見つめる海ちゃん。
「おせぇよ…やっときたな」
「あたしっ、あの…その…」
言いたいことがいっぱいありすぎて、なかなか言葉が出ない。しかも、海ちゃんとは久しぶりにこうやって寝たから恥ずかしくてまともに目も見れない。ずっと逸らしてるあたし。
「まだ、言わなくていい。もう少しだけこのままで居させてくれ」
そう言って、引き寄せて抱きしめた。
「ごめんな…俺、お前に心配させたくなくて最後の日あんなこといったんだ。なんで俺が病院いるか知ってるか?」
抱き合ってるから、海ちゃんの顔は見えないけど多分悲しい顔してる。
「って知らねぇか。俺、病気なんだ。脳のガンらしい。一度かかるともう治らないって医者が言ってた。」脳のガン…?
「お前と別れを告げた一週間前にいきなり倒れて意識ぶっ飛んで、病院で寝てたんだ。それで、医者から脳のガンですって言われて俺どうしたらいいかわからなくて。これから先の事を考えてたんだ。友希がこれ知ったらどうなるんだろうって。」
海ちゃんの声は小さくてボソボソ呟いてるみたいだった。ベットに座ってる海ちゃんの顔がなんだか悲しい。
「心配もしてほしくなかったのと、迷惑かけたくなかったから、友希に会ったときは不信な行動してた。それで、別れっていう決断をした」
そう言う事だったんだ…あたしのために、別れてくれたんだ。
「でも、それが友希を寂しくさせたんだな。
ごめんな」
それだけ言い終わると、あたしの方を向いて頭を下げた。
涙線が壊れて、大泣きする自分。
「あたしこそ、ごめん。これからは、あたしが海ちゃんを守るから。どんなに辛くっても全部受け止めていく。」
頬に濡れている涙を拭きながら言うあたしに海ちゃんは、あたしの頭を撫でた。
「よろしくな」
無邪気に笑う姿に、なんだかパワーが貰えた気がした。…二人で支え合う…
あたし達は、看護師さんに呼び出され医者が待つ部屋へと入った。
「海星さんの病気なんですが、今ガンが大きくなって言ってます。これからどんどん進行していって、足の神経がなくなって歩けなくことがあります。その時は、リハビリをしてください。」
「…はい」
海ちゃんは、覚悟を持っての上で返事をしたようだった。
「それと、一番困難なのは文字が書けなくなることです…」
「えっ…」 
あたしの声が出た。海ちゃんの方を見ると
意外にも、落ち着いた様子で聞いていた。
病室へ入っていくと、海ちゃんがベットに寝っ転がった。
「海ちゃん…大丈夫?」
おずおず聞いた。
「ごめん、今日はもう帰ってくれ。一人になりてぇんだ。」 
海ちゃんは、あたしと反対側に体を向けた。
「分かった…」
素直に病室を出ていった。
そりゃそうだよね…あんな、残酷な事告られたら冷静で居られない。駄目だ…あたしが支えるって言ったのに…涙が止まんない。
もう、海ちゃんの好きな学校も行けなくなるのかな…?友達と当たり前のように話せなくなる…なんで海ちゃんなの?海ちゃんは、ほんとにいい人だから、神様どうかお願い…
海ちゃんをいじめないで…。
次の日もまた次の日も、学校が終わって病院へ行く日々が続いた。今日も病院へと向かう。
「海ちゃんー、リンゴ持った来たよ!」
病室へ入ると、海ちゃんが何やら紙に書いていた。
「海ちゃんー?」
あたしの呼び声に気づくと、バッとその紙を隠した。
「おっ、リンゴだ!食べる食べる。」
ごまかしたな。
「さっき、何してたの?」
「なんもねぇよ。お前には関係ないだろ」 
はぁぁ?!
「もう、リンゴ食べさせない」
あたしは、ぷいっと顔を横に向けて頬を膨らませた。すると、
「貸せ。俺がむく。」
と言って、テーブルの上に置いてたリンゴと包丁を取った。
「海ちゃん…皮むけるの?」
「はあ?こんぐらいむけるに決まってんだろ。馬鹿にしてぇんじゃねぇよ」
フッと自慢げに言った海ちゃん。
リンゴを食べ終わるとお互い写真を撮りあって楽しんだ。お別れの時間はなんだか寂しい…そして怖い。
「あのさ、金曜日朝まで一緒にいて」
海ちゃんがこんな事言うなんて想像つかなかった。いつもは言わないくせに…もしかした、あたしに気遣ってくれてるのかもしれない。そんな所も好き。嬉しくてつい抱きついてしまった。
「いいよ!ずっと一緒にいよう!」
ずっと。
ずっと。
ずっと一緒に…居れるのかな?いや、いたいよ。だから、どこにも行かないでね…海ちゃん。今日は、金曜日。学校が終わると急いで家に行って自分の部屋から服やら下着やらバックに詰め込んだ。
「こんなもんかな?」
1日分の荷物を持って家を出る。タクシーを捕まえて、病院へと向かった。
病室に入ると、海ちゃんは何か紙に書いてる様子だった。一生懸命、鉛筆を動かしているのだ。この前もなんかしてた。
「海ちゃん!来たよ」
声をかけると、あたしに気づいて手紙らしきものをバッと隠した。
「おっ、お帰り!」
何もなかったかのように、笑った海ちゃん。
なんか、怪しい…
「ねぇ、さっきの何書いてたの?前も書いてたよね手紙?」 
「手紙だけど。」
素っ気ない感じで言って、あたしを隣へ座らせてくれた。
「なんか、病院での泊まりって新鮮じゃね?」
なんて、笑いながら話す。元気がいい声だ。海ちゃんの顔を見ると、とても病気を持ってる感じには見えないほど生き生きしていた。
「海ちゃん、凄いよね」
すると、顔を傾けて何がって顔をしている。
「だってさ、病気持ってるのにポジティブでいつも笑ってるよね。悲しくならないの?」
あたしが、悲しい顔をすると頭を優しく撫でてくれた。
「そりゃ、最初は悲しくなったよ。でも思ったんだ。こういう辛い時こそ元気でいなくっちゃって、お前の為にも。しょうがねぇだろ、いつまでもクヨクヨしてるより笑顔でいた方が気持ち的にも楽になれるだろ?」
海ちゃんの考え方が大人で感心した。
あたしも、見習わなくちゃ…あたしなんかよりも、辛いのは海ちゃんなのに、あたしが悲しくなっちゃって…
それから毎日のように学校行って、放課後は病院へと向かう日々が続いていた。休みの日は朝から通った。
「お天気いいね!」
今日は、休みだから海ちゃんと外へお散歩。
「外気持ちーな」
海ちゃんが、空を見上げた。
あたしも空を見た。
「そうだね」
うろこ雲が出てて、綺麗に見えた。
「あー、早く退院してーよ。皆に会いたい」
ベンチに座って肩を寄せ合い話した。
「大丈夫!絶対学校行けるよ!」
あたしがそう言ったら、横から怪しい表情で見てきた。
「ま、お前がいるからあんま寂しくないけどな」
笑っている。目本当になくなるよね、海ちゃんの笑った顔。
病室に戻り、まったりしてたら辺りは暗くなっていた。海ちゃんは寝ていたから、そっと病室から出て家に帰った。
「ただいま」
リビングに入ると、兄ちゃんがテレビを見ていた。
「おかえり」 
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