溢れる手紙
海ちゃんと喧嘩して次の日も、また次の日も連絡が来なかった。あたしは、その日から学校にも行く気なんか勿論なくてずっと部屋に引きこもってた。
携帯を眺める日々。電話来るかなってちょと期待していたけど、全くこない。
そうだよね…あたしが悪いんだから。
今頃になって、海ちゃんを責めてた事を罪悪感に思う。
ブーブー…
いきなり、あたしの携帯が鳴り響く。
電話の相手は龍だった。
「もしもし」
「友希か!?」
慌ててる様子だ。
「そうだけど」
「お前、学校来いよ!」
なんだ、そんなこと言いにわざわざ電話したんだ。
「あたしの事はほっておいて。気にしなくていいから」
そう言って、電話を切ろうとしたその時
「なんか友希らしくないね」
ハッキリと聞こえたその一言。既に、電話は切れていた。
なに、あたしらしさって。分かんない。分かりたくもないし。
こうやって、引きこもってるから現実から逃げているんだ。
喧嘩して、2週間が経ちあたしは、そろそろ学校に行かなくちゃと思い通うようになっていた。
放課後は海ちゃんが待ってる訳なくて、歩いて帰った。
昼休み、何故か龍に呼び出されて屋上へと向かった。
重たいドアを開くと、フェンスに寄りかかって景色を眺めている龍がいた。あたしは、ゆっくりと龍の元へ歩いていき隣に行った。
「風、気持ちいいな」
あたしは、黙って頷いた。
すると、あたしを見た龍は口を開いた。
「あのさ、友希。」
龍は、空を見上げながら言っていた。
「海星先輩の事嫌いなの?」
いきなりの発言に、下を俯いていた顔をバッと上げた。
「この前、会った時言ってたよ。
俺、友希を幸せにしてやれねぇって」
涙線が崩れた。
「俺さ、あんな弱音吐く先輩初めて見てさビックリしたんだ。前は不器用に女を愛して簡単に捨ててた。それが今になってはちゃんと女の子を考えてる。まともな男はそんなの普通とか思ってるかもしんねぇけど、先輩にとってそれは難しかったんだよ。だから、思ったんだ。友希に出会って変わったんだって」
あたしは、涙が溢れてぐちゃぐちゃになっていてその場で倒れていた。
「海星先輩、凄く辛そうだった。友希がいない世界なんて考えてなかった。だけど、離れて分かったんだ。俺がいると友希が駄目になる。傷つけてるんだって。」
龍は、あたしの前にしゃがんだ。
「もう、俺が居なくなっても…」
言葉を詰まらせた。
「俺が居なくなっても、なんでもできる女になってくれって…」
最後は、掠れた声だった。
「うっ…うっ…あたし…っ」
あたしは、自分でも分からないぐらい大泣きしていて龍は優しく見守っていた。
「落ち着いてから話していいよ。ずっと待ってるから。」
自分の気持ちを整理した。息を整えて話した。
「あたし、全然海ちゃんの気持ち分かっていなかった。ずっと自分の事しか見てなくて、海ちゃんを責めてた。」
本当に辛かったのは海ちゃんの方だった。
あたし、馬鹿じゃん…
「まだ間に合うと思うよ」
龍が肩に手をおいて、あたしを勇気づけた
「行かなくちゃ…」
立ち上がり、
「龍!ありがとね!」
お礼をいい、海ちゃんの家までもうスピードで走って行った。もう、どうなったっていい。あたしの気持ちを伝えて謝らなくちゃ。
家につき、インターホンに伸ばそうとした時
ガチャ…
「っ…」
家から海ちゃんが出てきた。
「友希…」
久しぶりに聞く声は、全然変わらなかった。変わったのは、体型だった。前よりも窶れてる。あたし達は場所を変えて公園に行った。
前来た公園だ。お互い、ベンチに座った。
「…」
沈黙が続く。正直に話さなくちゃ前に進めない。
「海ちゃん、あのねこの前はごめ…」
「俺達、別れようぜ」
頭の中が真っ白になった。あたしは、唖然とした。
「違う…あたしが悪かったの!海ちゃんの気持ち全然分かってなくて…」
「うん。俺こそ、ごめん。不安にさせて。悲しかったよな」
海ちゃんは、頭を撫でた。
「だけど、これ以上一緒にいない方がいい」
「え?どういう事?もう、海ちゃんを責めたりしないよ!」
焦るあたしとは逆で、落ち着いている海ちゃん。
「そういうことじゃねぇんだよ」
海ちゃんは、どこか遠くを見ていてなんか隠しているようにも見える。
「なにが?」
「お前、俺の心踏みにじるな」
なんて、笑ってない表情で笑ってる。
「ね、なんか隠し事してるでしょ?」
あたしの知らない海ちゃんなんてなんだか嫌だな…このまま、別れるなんて肯定出来ない。
「うーん。友希に言ったら、崩れる。」
崩れる?意味深な言葉を発した。
「そう言う事だから、もう友希には会わねぇ。」
ベンチから立って、どっか行ってしまう海ちゃんを引き止めたけど全然振り向いてくれない。
「待ってよ…!」
いくら、言っても聞く耳を持たない。
この前の夢をふと思い出した。本当に、まさ夢になっちゃった…海ちゃんはあたしの前から消えちゃったよ。
「ふっ…ハハハハ…」
なんか、笑えてきちゃった。今までの事が馬鹿馬鹿しく思えてきちゃった…最後の言葉が、あたしにはさっぱり理解が出来なかった。
…友希は崩れる…
何よ、馬鹿。なに、この終わりかた。後悔しかない。これから、私と海ちゃんはあかの他人なんだろうか…そう思うと苦しくて悲しくてまた叫ぶように泣いた。
それから2ヶ月が経った。
あれ以来、海ちゃんとは会ってもないし連絡もしてない。
今のあたしは、前の記憶さえ薄れていった。
結構成長したかな…
普通に学校行って、普通に授業して、普通に帰る。この繰り返しで特に変わった日はない。
今日も、あたしは授業を受けている。
先生の意味が分からない言葉を言っているけど聞いてるわけなくて机に伏せて寝る。
4組の人怖い人達とも、友達になり昼休みはずっと教室に遊び行った。
「ねーね、友希。明日遊び行かない?」
誘いが来た。初めての事じゃないからすんなり受け入れた。
「放課後ならいいよ」
海ちゃんは、あたしと喧嘩してから学校にも来なくなった。あたしの知らない海ちゃんになってしまった。後悔の終わり方をし、自分を責め自分に苛立ち自分を追い込ませていた。そういう気持ちが段々強くなって、あたしは夜遊びするようになった。こうやって誘われては皆と夜中まで遊びまくる。成長した成長したって結局口だけ…本当は、成長した姿なんてこれっぽちもない。逆に、昔よりも全然成長しなくなった。もう、いいんだ…
ガラッー!
教室のドアが勢いで開いた。
「おい、どうした?」
すぐそこにいた男が目を細めて言った。
ドアを開けた子は女の子だった。多分先輩かな?あたしは、先輩から顔を向き直した。
周りは静かで、足音が聞こえるから多分歩いているんだと思う。止まった。
「えっ…」
先輩の顔を見たら、怒っているような感じだった。皆は、唖然とあたし達2人を見つめてる。
その時…
バシッ…っ
先輩の手があたしの頬を叩いた。
「痛っ…」
頬はジンジンして痺れる程痛かった。
バッと上を向き、睨んだ。
「あんた、よくそんなんで居られるわね」
高い声が教室中に響く。
「どんだけ海星の事を見てないかよく分かったよ。今、どれほど辛い思いしてるかあんたには分からないよね!」
先輩がいきなり泣き始めたのだ。そして、その場で崩れ落ちた。
あたしには、なぜ先輩が泣いているのかもなぜこんな事言っているのかも分からない。
「あの…先輩?何言ってるんですか」
笑いながら、崩れ落ちてる先輩を起こそうと立ち上がった。
「海星、病院いるの…」
一瞬に身体が動けなくなった。
「そういう嘘信じませんよ」
海ちゃんが病院?ありえない。最後に会った日は普通だったし…
「本当だよ!港病院にいる…行ってあげな。」
先輩は、走って出ていってしまった。
「海星先輩の事、本当かもしれないよ。」まさか…あたし…信じない。信じたくない。
海ちゃんは、あたしの知らないとこで元気にやってるよ。
「あ、そう言えば俺、先輩が病院に入ってく所見た」
「え、嘘。なんかの病気?」
「ただの風邪なんじゃね?」
友達がざわつきはじめた。
うるさい…
「はは、そーかもね!」
うるさい…うるさい。
「意外と体弱そうだし」
「うるさい!黙って!」
怒りが爆発して、怒鳴り声をあげた。
皆は、あたしを睨みつけた。敵に回された…
「もうやだっ…」
視界がボヤけてきた。そして、その場を離れ自然と屋上へ向かっていた。他の教室では授業中だった。
フェンスへ走って行き、乗り上げる。
ガシャ…
「もう、あたしには居場所がないみたい。」
絶望的で、限界だった。疲れたよ…現実なんて
要らない。目を瞑り、ゆっくりゆっくり体を倒していく。
ガシャガシャ…っ!
「…っ」
誰かが、あたしの手を掴みフェンスの外側へ連れ戻した。
「お前!馬鹿か!!」
聞こえたのは、龍の声。
ハッ…
「あたしっ…」
今頃になって自分が何をしてたか分かった。
涙線が崩れ、大泣きするあたしに頭を優しくなでた龍。
「友希、自分を自分で追い込むなよ…」
消え入りそうな声。
顔をあげ龍を見ると、泣きそうな切なそうにあたしを見てた。そんな顔したら、もっと泣いちゃうよ…
「海星先輩の事で苦しんでるなら、隠さず俺に言えよな。一人で考えるより、二人で解決すればいいことだろ。そっちが楽だぜ?」
確かに、龍が言ってることは分かってる。でも、迷惑かけたくないし…
しばらく、無言になっているとあたしの心を見透かしたように
「どうせ、迷惑かけたくないとか思ってんだろ。」
下を向き俯くと
「やっぱりな」
龍は苦笑いで笑った。
「俺、意外と分かってるんだぜ…」
そう言うと、立ち上がってあたしの方へ手が伸び立たせてくれた。
フェンスに寄りかかった。
「何が分かってるの?」
馬鹿にしたように、鼻で笑った。
龍の目は、あたしを見てなくて遠くの景色を見てた。
「気持ち。てか、俺達幼稚園の頃から一緒だったろ!?」
「あ、そうだったね!龍は、昔から人気者だったよね」
そして、懐かしい話しで盛り上がった。
気づけば、外は暗くなっていて帰りは二人で帰った。
「海星先輩の事だけど…行かなくていいのか?」
龍の足が止まった。あたしは、歩き始める。
「おい、止まれよ」
少し大きい声であたしを止めようとしたけど、今泣いてるところを龍に見られたくないからはや歩きでその場を去ろうとした。龍だけは、自分の弱いとこ見せたくない…変なプライドが邪魔をする。でも、これ以上心配させたくないから…許して。
あたしの手は、早くも龍に掴まれた。
背中を向けてるから多分見られてない…
早くここから逃げたくて強気になるんだ…
「離してよっ!」
手を思いっきり振り離させようとしたけど、男の力に負けて全然離せない。それどころか、力は強くなっていく。
「痛い…離して」
「離さねぇ」
その時、グイッと手を引っ張ら近づかせた。
「お前、いつまでも逃げてんじゃねぇよ!」
今までにない程、声を上げている龍。あたしは、泣くことしかできない。嗚咽でなかなか声が出なくて、身体は震えている。
あたし、こんな弱かったっけ…今更知った。今までは、自分は強いってずっと思ってたけど本当は強くなくて、こんなにも弱かったんだ…それを思うとまた涙が込み上げてきた。
「このままでいいのか?良くねえだろ!俺は、こんな状態になってるお前見てらんねえよ!本当は、会いたいって気持ちがあるんだろ?心配なんだろ?だったら、なんで行動にうつそうとしねぇんだよ!海星先輩が会いに来てくれると思ってるんだろ。あまったれんな!」
すると、優しく包み込むようにあたしを抱きしめた。
「自分の気持ち言えないで心で思ってるだけじゃ前に進まない。素直な気持ちで相手に言えばきっと分かってくれるし受け止めてくれるよ。だから、俺を信じて。行ってこいよ?」
携帯を眺める日々。電話来るかなってちょと期待していたけど、全くこない。
そうだよね…あたしが悪いんだから。
今頃になって、海ちゃんを責めてた事を罪悪感に思う。
ブーブー…
いきなり、あたしの携帯が鳴り響く。
電話の相手は龍だった。
「もしもし」
「友希か!?」
慌ててる様子だ。
「そうだけど」
「お前、学校来いよ!」
なんだ、そんなこと言いにわざわざ電話したんだ。
「あたしの事はほっておいて。気にしなくていいから」
そう言って、電話を切ろうとしたその時
「なんか友希らしくないね」
ハッキリと聞こえたその一言。既に、電話は切れていた。
なに、あたしらしさって。分かんない。分かりたくもないし。
こうやって、引きこもってるから現実から逃げているんだ。
喧嘩して、2週間が経ちあたしは、そろそろ学校に行かなくちゃと思い通うようになっていた。
放課後は海ちゃんが待ってる訳なくて、歩いて帰った。
昼休み、何故か龍に呼び出されて屋上へと向かった。
重たいドアを開くと、フェンスに寄りかかって景色を眺めている龍がいた。あたしは、ゆっくりと龍の元へ歩いていき隣に行った。
「風、気持ちいいな」
あたしは、黙って頷いた。
すると、あたしを見た龍は口を開いた。
「あのさ、友希。」
龍は、空を見上げながら言っていた。
「海星先輩の事嫌いなの?」
いきなりの発言に、下を俯いていた顔をバッと上げた。
「この前、会った時言ってたよ。
俺、友希を幸せにしてやれねぇって」
涙線が崩れた。
「俺さ、あんな弱音吐く先輩初めて見てさビックリしたんだ。前は不器用に女を愛して簡単に捨ててた。それが今になってはちゃんと女の子を考えてる。まともな男はそんなの普通とか思ってるかもしんねぇけど、先輩にとってそれは難しかったんだよ。だから、思ったんだ。友希に出会って変わったんだって」
あたしは、涙が溢れてぐちゃぐちゃになっていてその場で倒れていた。
「海星先輩、凄く辛そうだった。友希がいない世界なんて考えてなかった。だけど、離れて分かったんだ。俺がいると友希が駄目になる。傷つけてるんだって。」
龍は、あたしの前にしゃがんだ。
「もう、俺が居なくなっても…」
言葉を詰まらせた。
「俺が居なくなっても、なんでもできる女になってくれって…」
最後は、掠れた声だった。
「うっ…うっ…あたし…っ」
あたしは、自分でも分からないぐらい大泣きしていて龍は優しく見守っていた。
「落ち着いてから話していいよ。ずっと待ってるから。」
自分の気持ちを整理した。息を整えて話した。
「あたし、全然海ちゃんの気持ち分かっていなかった。ずっと自分の事しか見てなくて、海ちゃんを責めてた。」
本当に辛かったのは海ちゃんの方だった。
あたし、馬鹿じゃん…
「まだ間に合うと思うよ」
龍が肩に手をおいて、あたしを勇気づけた
「行かなくちゃ…」
立ち上がり、
「龍!ありがとね!」
お礼をいい、海ちゃんの家までもうスピードで走って行った。もう、どうなったっていい。あたしの気持ちを伝えて謝らなくちゃ。
家につき、インターホンに伸ばそうとした時
ガチャ…
「っ…」
家から海ちゃんが出てきた。
「友希…」
久しぶりに聞く声は、全然変わらなかった。変わったのは、体型だった。前よりも窶れてる。あたし達は場所を変えて公園に行った。
前来た公園だ。お互い、ベンチに座った。
「…」
沈黙が続く。正直に話さなくちゃ前に進めない。
「海ちゃん、あのねこの前はごめ…」
「俺達、別れようぜ」
頭の中が真っ白になった。あたしは、唖然とした。
「違う…あたしが悪かったの!海ちゃんの気持ち全然分かってなくて…」
「うん。俺こそ、ごめん。不安にさせて。悲しかったよな」
海ちゃんは、頭を撫でた。
「だけど、これ以上一緒にいない方がいい」
「え?どういう事?もう、海ちゃんを責めたりしないよ!」
焦るあたしとは逆で、落ち着いている海ちゃん。
「そういうことじゃねぇんだよ」
海ちゃんは、どこか遠くを見ていてなんか隠しているようにも見える。
「なにが?」
「お前、俺の心踏みにじるな」
なんて、笑ってない表情で笑ってる。
「ね、なんか隠し事してるでしょ?」
あたしの知らない海ちゃんなんてなんだか嫌だな…このまま、別れるなんて肯定出来ない。
「うーん。友希に言ったら、崩れる。」
崩れる?意味深な言葉を発した。
「そう言う事だから、もう友希には会わねぇ。」
ベンチから立って、どっか行ってしまう海ちゃんを引き止めたけど全然振り向いてくれない。
「待ってよ…!」
いくら、言っても聞く耳を持たない。
この前の夢をふと思い出した。本当に、まさ夢になっちゃった…海ちゃんはあたしの前から消えちゃったよ。
「ふっ…ハハハハ…」
なんか、笑えてきちゃった。今までの事が馬鹿馬鹿しく思えてきちゃった…最後の言葉が、あたしにはさっぱり理解が出来なかった。
…友希は崩れる…
何よ、馬鹿。なに、この終わりかた。後悔しかない。これから、私と海ちゃんはあかの他人なんだろうか…そう思うと苦しくて悲しくてまた叫ぶように泣いた。
それから2ヶ月が経った。
あれ以来、海ちゃんとは会ってもないし連絡もしてない。
今のあたしは、前の記憶さえ薄れていった。
結構成長したかな…
普通に学校行って、普通に授業して、普通に帰る。この繰り返しで特に変わった日はない。
今日も、あたしは授業を受けている。
先生の意味が分からない言葉を言っているけど聞いてるわけなくて机に伏せて寝る。
4組の人怖い人達とも、友達になり昼休みはずっと教室に遊び行った。
「ねーね、友希。明日遊び行かない?」
誘いが来た。初めての事じゃないからすんなり受け入れた。
「放課後ならいいよ」
海ちゃんは、あたしと喧嘩してから学校にも来なくなった。あたしの知らない海ちゃんになってしまった。後悔の終わり方をし、自分を責め自分に苛立ち自分を追い込ませていた。そういう気持ちが段々強くなって、あたしは夜遊びするようになった。こうやって誘われては皆と夜中まで遊びまくる。成長した成長したって結局口だけ…本当は、成長した姿なんてこれっぽちもない。逆に、昔よりも全然成長しなくなった。もう、いいんだ…
ガラッー!
教室のドアが勢いで開いた。
「おい、どうした?」
すぐそこにいた男が目を細めて言った。
ドアを開けた子は女の子だった。多分先輩かな?あたしは、先輩から顔を向き直した。
周りは静かで、足音が聞こえるから多分歩いているんだと思う。止まった。
「えっ…」
先輩の顔を見たら、怒っているような感じだった。皆は、唖然とあたし達2人を見つめてる。
その時…
バシッ…っ
先輩の手があたしの頬を叩いた。
「痛っ…」
頬はジンジンして痺れる程痛かった。
バッと上を向き、睨んだ。
「あんた、よくそんなんで居られるわね」
高い声が教室中に響く。
「どんだけ海星の事を見てないかよく分かったよ。今、どれほど辛い思いしてるかあんたには分からないよね!」
先輩がいきなり泣き始めたのだ。そして、その場で崩れ落ちた。
あたしには、なぜ先輩が泣いているのかもなぜこんな事言っているのかも分からない。
「あの…先輩?何言ってるんですか」
笑いながら、崩れ落ちてる先輩を起こそうと立ち上がった。
「海星、病院いるの…」
一瞬に身体が動けなくなった。
「そういう嘘信じませんよ」
海ちゃんが病院?ありえない。最後に会った日は普通だったし…
「本当だよ!港病院にいる…行ってあげな。」
先輩は、走って出ていってしまった。
「海星先輩の事、本当かもしれないよ。」まさか…あたし…信じない。信じたくない。
海ちゃんは、あたしの知らないとこで元気にやってるよ。
「あ、そう言えば俺、先輩が病院に入ってく所見た」
「え、嘘。なんかの病気?」
「ただの風邪なんじゃね?」
友達がざわつきはじめた。
うるさい…
「はは、そーかもね!」
うるさい…うるさい。
「意外と体弱そうだし」
「うるさい!黙って!」
怒りが爆発して、怒鳴り声をあげた。
皆は、あたしを睨みつけた。敵に回された…
「もうやだっ…」
視界がボヤけてきた。そして、その場を離れ自然と屋上へ向かっていた。他の教室では授業中だった。
フェンスへ走って行き、乗り上げる。
ガシャ…
「もう、あたしには居場所がないみたい。」
絶望的で、限界だった。疲れたよ…現実なんて
要らない。目を瞑り、ゆっくりゆっくり体を倒していく。
ガシャガシャ…っ!
「…っ」
誰かが、あたしの手を掴みフェンスの外側へ連れ戻した。
「お前!馬鹿か!!」
聞こえたのは、龍の声。
ハッ…
「あたしっ…」
今頃になって自分が何をしてたか分かった。
涙線が崩れ、大泣きするあたしに頭を優しくなでた龍。
「友希、自分を自分で追い込むなよ…」
消え入りそうな声。
顔をあげ龍を見ると、泣きそうな切なそうにあたしを見てた。そんな顔したら、もっと泣いちゃうよ…
「海星先輩の事で苦しんでるなら、隠さず俺に言えよな。一人で考えるより、二人で解決すればいいことだろ。そっちが楽だぜ?」
確かに、龍が言ってることは分かってる。でも、迷惑かけたくないし…
しばらく、無言になっているとあたしの心を見透かしたように
「どうせ、迷惑かけたくないとか思ってんだろ。」
下を向き俯くと
「やっぱりな」
龍は苦笑いで笑った。
「俺、意外と分かってるんだぜ…」
そう言うと、立ち上がってあたしの方へ手が伸び立たせてくれた。
フェンスに寄りかかった。
「何が分かってるの?」
馬鹿にしたように、鼻で笑った。
龍の目は、あたしを見てなくて遠くの景色を見てた。
「気持ち。てか、俺達幼稚園の頃から一緒だったろ!?」
「あ、そうだったね!龍は、昔から人気者だったよね」
そして、懐かしい話しで盛り上がった。
気づけば、外は暗くなっていて帰りは二人で帰った。
「海星先輩の事だけど…行かなくていいのか?」
龍の足が止まった。あたしは、歩き始める。
「おい、止まれよ」
少し大きい声であたしを止めようとしたけど、今泣いてるところを龍に見られたくないからはや歩きでその場を去ろうとした。龍だけは、自分の弱いとこ見せたくない…変なプライドが邪魔をする。でも、これ以上心配させたくないから…許して。
あたしの手は、早くも龍に掴まれた。
背中を向けてるから多分見られてない…
早くここから逃げたくて強気になるんだ…
「離してよっ!」
手を思いっきり振り離させようとしたけど、男の力に負けて全然離せない。それどころか、力は強くなっていく。
「痛い…離して」
「離さねぇ」
その時、グイッと手を引っ張ら近づかせた。
「お前、いつまでも逃げてんじゃねぇよ!」
今までにない程、声を上げている龍。あたしは、泣くことしかできない。嗚咽でなかなか声が出なくて、身体は震えている。
あたし、こんな弱かったっけ…今更知った。今までは、自分は強いってずっと思ってたけど本当は強くなくて、こんなにも弱かったんだ…それを思うとまた涙が込み上げてきた。
「このままでいいのか?良くねえだろ!俺は、こんな状態になってるお前見てらんねえよ!本当は、会いたいって気持ちがあるんだろ?心配なんだろ?だったら、なんで行動にうつそうとしねぇんだよ!海星先輩が会いに来てくれると思ってるんだろ。あまったれんな!」
すると、優しく包み込むようにあたしを抱きしめた。
「自分の気持ち言えないで心で思ってるだけじゃ前に進まない。素直な気持ちで相手に言えばきっと分かってくれるし受け止めてくれるよ。だから、俺を信じて。行ってこいよ?」