キミじゃなきゃダメなんだ


「いやー、足を怪我しちゃって、そこの水道で洗ってたんですけど、蛇口を捻りすぎちゃって。勢いよく被っちゃいましたぁ」



ほんと馬鹿ですよね~とケラケラ笑う。

咄嗟に出た言い訳だったけど、頭の回転がとことん遅い私にしては、上出来だと思った。


....普段、上手く嘘がつけない私だけど。


先輩の前では、何故かこんなにもすんなり嘘がつけてしまうこと、私はそろそろ気づいていた。


...なんでかな。

先輩には格好悪いところ、見られたくないんだ。



「....それは確かに....馬鹿だね」


先輩は普段の私のアホさを知っているからか、すんなりと私の嘘を信じて、呆れた目を向けてくれた。


「あはは、ですよね!いや~もうこれからどうしようかと思ってたんですけど....先輩はどうしてここに?」

「...君が怪我して、ここの水道に足洗いに行ってるって、寺橋さんに聞いたから」


寺橋さんっていうのは、チョコちゃんのことだ。




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