キミじゃなきゃダメなんだ


あのひとは、喜んでくれるだろう。

顔には出さないだろうけど。

私から彼の教室に来たってわかったら。

嬉しいって、きっと思ってくれる。


....それをわかってる自分が、なんだか急に、嫌だと思った。



「.....マルちゃん...?」


松原先輩が、心配そうに私の顔をのぞきこんだ。

驚いて、ハッとする。

その拍子に、瞳から涙が流れた。

....え、涙?


「なんで泣いてんの?ヒサにいじめられてんの?大丈夫だよ、言ってみ?俺が厳しく言っとくからさ」

「あ、い、いえっ。違います違います!いじめられてないです」

「でも泣いてんじゃん。なんかあったんでしょ?」

「....わかんないです....ごめんなさい。でも、ほんと、なんでもないので。....汐見先輩には、何も言わないで下さい」


ほんとなんで泣くんだ、私。

悲しいことなんかなんにもないのに。


....なんで泣いてんだ。


「....そう?わかった。でも、なんかあったら言うんだよ」


松原先輩は、なにか察してくれたらしい。

心配そうな目は変わらず、だけどすんなり納得してくれた。



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