キミじゃなきゃダメなんだ
百合は勉強できないけど、たぶん頭は悪くない。
そう思って、一緒に昼食をとったあととかに、適当にクイズとか謎々とかを出したら、ほとんど正解した。
『なんでその頭を勉強に生かせないの?』と訊くと、
『数学は永遠に敵なんで....』と控えめな返事をした。面白い子だなと思った。
よく百合に、『いつから、なにがきっかけで好きになってくれたんですか?』と訊かれるけど、僕は適当に誤魔化してる。
百合もそれに気づいてる。でも絶対言わない。言うつもりない。
九月の痴漢事件で百合と知り合うまで、僕は基本的に電車でも校内でも、百合を探していた。
だから遊園地デートのときに、百合がメロンソーダをよく飲んでいるのを知っていることがバレて、非常に焦った。
自分が割とストーカー予備軍なのには自覚がある。
でもわざわざ好きな子に引かれたいとは思わない。誰だってそうだろう。
何ヵ月も眺めているうちに、百合は正義感が強くて、困ってる人がいたら放っておけないタイプなんだとわかった。
ただ彼女は、問題に対してむやみやたらに首を突っ込むわけではない。
それがわかったのは、ひとえに一方的に見続けていたからに過ぎない。