キミじゃなきゃダメなんだ
僕が百合を好きになれたのは、僕がストーカーまがいだったからだし、それを百合が見事な鈍感さで気づかなかったからだ。
気づかれてたら死んでた。色んな意味で。
百合は、常に周りをよく見てると思う。
優先席の若者に声をかけるにしても、他校の生徒に注意するにしても。
自分が声をかけるべきタイミングを、彼女は無意識に図ってる。
そのときの、真剣な顔。
....女好きな諒が、よく『ギャップがある子っていいよなぁ』とか言ってるけど、僕はそのときまでその良さがわからなかった。
だけど彼女のその表情を目にした瞬間、たぶん、やられたって思った。
...改めて言うと恥ずかしいな。ギャップにやられたとか言いたくない。だから絶対百合にも諒にも言いたくない。
普段、何も考えてなさそうに笑ってるくせに。
静かに、周りを見据えてる。
そのときの、細められた目。
まっすぐな視線。
何かを真剣に考えるような表情。