花明かりの夜に
(紫焔さま――!)
思わず小屋の中に隠れた。
「ご主人、久しいな。
今夜、宿をとれる?」
「ももももちろんです、若さま。
おおお覚えてくださっていたとは、光栄にございます」
主人はひどくどもった。
「なんと、おひとりでいらっしゃったのですか?」
「ああ、他の者は向こうの町に泊まる。
この旅籠のみごとな桜を思い出して、こっそり遠出したくなってね。
またご主人の顔を見られてうれしいよ。元気そうだな」
「ああ、ありがたいことでございます」