花明かりの夜に
後ろで束ねられたまっすぐな長い髪が、旗のようにひらりと風にはためくのが見えた。


めざす枝までたどり着くと、上の枝を手すりがわりに持って、枝の先の方へ――着物へ向かって歩き出す。

が、たわむ枝に足が止まった。

後ずさるように木の幹へと戻ると、片手を伸ばして枝を揺らしたり、足で揺らしたりしている。


「枝が細いな。あれじゃ折れてしまう。危ないね」


紫焔はひとりつぶやくと。

ふとなめらかな頬にニヤリと笑みを浮かべて、手を伸ばして取った矢をつがえ、狙いをさだめた。


「若さま、何を――?」

「あの枝を狙ってみようと思ってね」

「まぁ」
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