天然王子
 

あおさんは、頭を下げたままのシュンくんに聞いた。


「…ゼンは、ちゃんと私のこと好きだった?」

「………うん、ずっと好き"だった"」


シュンくんが顔を上げると、見たことのない笑顔で笑っていた。

たぶん…好きな人を、見る笑顔。


「そっか!ならいーやっ」


あおさんはそう言うと、口元を緩ませた。


「もう、悩まなくていいよ…
私も、ゼンが大好きだっただから。」

「あお…」

「おっ…おめでとう!
両思いじゃんっ!!」


私は一人でパチパチと両手をを叩いた。

二人は顔を見合わせると、クスッと笑った。


「…いや、過去形だから」

「言ったじゃん、"だった"って。」

「え…?」


二人の、時間が
ようやく進みだした気がした。


「これで俺は、前に進める」


そう言ってシュンくんが私に見せた笑顔は、あおさんに向けた笑顔と同じだった。


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