君が居た頃。


「お、おはよ。湊魅」

「おはよ、季織」

なんとか緊張を隠して挨拶をすると、
意外にも落ち着いた様子で返される。

すると、後ろでそわそわしながら
覗いていた香織に気付き、
目を向けた。

「澤木さん……あれ?どうしてここに?
………ああ、季織も澤木だっけ」

「あ、うん妹。………て、
香織のこと知ってるの?」

「知ってるよ、だって
同じ学校じゃないか
それに、委員会も一緒だろ?」

それはそうだけど……でも……。

「だ、だって!何で結城くんが
結城くんみたいな……あ、アイドルが!
私を知ってるの?」

驚いた顔で訪ねる香織。
それもそのはずだけど。

そんな香織に対し、
湊魅は余裕たっぷりの
天使のような笑顔を浮かべた。



「そう簡単に忘れるわけないだろ?」



…………………っ!

……多分、湊魅じゃなかったら
ごく普通の社交辞令だけど……。

あんな王子さまみたいなオーラ
発信しながら言われたもんだから、
ママも香織も私も、
なんだか赤面……。

「じゃあ、行こうか季織。
お母さんありがとうございました」

「いえーまたいらしてね」

ママと香織に見送られ、
すっごく自然に湊魅に手を引かれた。


「いってきます!」



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