白いジャージリターンズ~先生と私と空~
「先生、大好き」
「知ってる……」
あったかい手でおでこを撫でる先生。
保健室だね、ここ。
「ごめんな。こうしてちゃんと直のこと見てやれなかった」
「いいの。先生。矢沢って呼んで」
「久しぶりの高校生ごっこか。ま、今日は特別な」
見上げる先生の顔は、あの頃と何も変わってなくて。
ちょっと伸びたひげも、ちょっとくせ毛な髪も。
「矢沢ぁ、心配しただろ。無理すんな」
「先生、ぎゅーってしてください」
先生は、真顔から一瞬笑いそうになってから、私をぎゅっと抱きしめてくれた。
「おい、保健室でこんなことしたことねぇだろ」
「ふふ」
「したかったけど、我慢してたのに」
くくくくってふたりで笑って、そっとキスをした。
戻れた気がしたんだ。
私に。
矢沢直に。
本当の自分を取り戻せたような、そんな不思議な気持ちだった。
「母親、休憩タイムだ。明日と明後日、休めるようにしたから」
「ダメだよ。先生」
「ダメじゃない。学校には、俺の代わりはいくらでもいる。でも、お前には俺しかいない」
隣の部屋から聞こえるボールを蹴る音と、空の声。
その声を確認した先生は、私の頬を両手で挟み、キスをした。
唇の温かさに涙が出そうになっていると、熱い舌が入ってきて……
「空の母親だけど、俺の奥さんなんだからなぁ?誰にもやらねぇよ」
久しぶりの熱いキス。
耳元で先生が言ってくれた。
「高田コーチには負けらんねぇからな。空の病院、俺がついていくから」
高田コーチから電話があったんだって。
空のギプスが取れる日、一緒に病院に行きましょうかって。
先生は休めないと思ってた。
頼んじゃダメだと思ってたんだ。
でも、休んでくれた。
「何よりも優先するのが家族だから。遠慮するな。直、俺を誰だと思ってる?」
大好きなドSな笑顔で私を見つめる先生の首に両手を絡めて抱きついた。