白いジャージリターンズ~先生と私と空~
「あ、中川嵐!体力測定で1位だっただろ。短距離!」
「1位だったんですか。知りませんでした」
痛んだ髪の先が黄色く光る。
まだ幼い顔で、はにかむように笑った。
「で、今日は誰に用事?」
「新垣先生です」
中川嵐は、俺の目を一瞬見た後、視線を外した。
「俺の母さん、新垣先生の元彼女なんすよ」
顔を上げた嵐は、俺を試すようにニヤリと笑った。
その顔は、さっきまでの幼い顔ではなく、大人っぽい顔に見えた。
「元彼女?え?俺の?」
俺は、数少ない過去の彼女の顔を思い出したが、思い当たる女性はいなくて。
というか、高校生の息子がいるってことは、年上?
年上の彼女・・・・・・いたかぁ?
「あ!」
2つ年上の彼女がいたことを思い出すと同時に彼女の笑顔もよみがえる。
大学時代だったか、高校の終わりだったか。
バイト先の年上の女性と付き合った。
でも、長く続いた記憶はない。
「あんたのせいで、母さんの人生、最低になったんだよ」
鋭い目つきが、彼女に似ているような気がした。
気が強い人だった。
「どういう意味?」
「あんたと別れて、悲しくて、母さんはろくでもない男と付き合って、俺ができた。な?最悪だろ?」
そう言った彼の瞳は、悲しい、寂しいと叫んでいるように感じた。