白いジャージリターンズ~先生と私と空~
「うわぁぁあ~ん」
桜風味の紅茶を飲みながら、高校時代の写真をめくっていた私の耳に、愛しい我が子の泣き声が届く。
「空ぁ~、どしたの?」
抱き上げると、息子の空はにっこりと笑った。
大好きな新垣和人先生が私の夫となった。
そして、かわいい子供が生まれた。
「ほうら、これがパパの若い頃だよぉ」
体育祭の先生の写真を空に見せると、パッパッパ~と笑う。
人気者すぎて、私はいつも遠くから先生を見ていた。
「ママぁ~」
「空、生まれてきてくれてありがとね」
こんなセリフを我が子に言える日が来るなんて。
夢見てた。
先生と結婚すること。
先生の子供を産むこと。
でも、遠い夢だった。
「パパ、すっごいかっこよかったんだよぉ。今でもかっこいいけど」
「ママ~!!」
先生は、今でも高校の人気者で、怖い先生として頑張ってる。
独身の頃よりは、ファンは減ったと思うけど、毎年絶対に誰かに告白されている。
ほんの数週間前の、卒業式でも・・・・・・
先生に恋をしていた女子高生がいた。
泣きながら、先生に告白したその子の話を聞いて、
自分と重なった。
出会う時期が違えば、私がその立場だった。
もし、先生に誰か大事な人がいたら、私はあきらめるしかなかったんだよね。
こんな風に、最近ものすごく高校時代のことを思い出すんだ。
それは、空が少し落ち着いてきて、私の時間が持てるようになったからかもしれない。