白いジャージリターンズ~先生と私と空~
“矢沢”
そう呼ばれるたびに、息苦しくなるくらいにドキドキした。
先生ってすごいね。
一瞬で、私を幸せにできるんだから。
今は、“直”って呼ばれている私。
でも、時々恋しくなる。
「先生~、矢沢って呼んでみて」
「ん?」
少し早く帰って来た先生が、ソファでコーヒーを飲んでいた。
「直はママになっても、変わらないな」
「だってぇ、春になると、高校時代のこと思い出しちゃうんだよ」
空は、先生の横に座り、ミニカーで遊んでいる。
先生に似て、少しくせ毛。
「矢沢ぁ~、ちょっと甘いもの食いたい」
先生は私のツボを知ってる。
腕組みして、ちょっと怖い顔をしながら、そう言った先生に、ドキドキしちゃう私。
「はい」
チョコを手渡すと、その手を握ろうと引っ張る。
「矢沢、俺と一緒にチョコ食べよう」
「先生っ!」
全くおかしなふたり。
こんなバカなことをしているパパとママを見て、空は嬉しそう。
先生の真似をして、私の腕を引っ張ろうとする。
大好きなふたりに引っ張られる私、幸せすぎる。