白いジャージリターンズ~先生と私と空~

“矢沢”

そう呼ばれるたびに、息苦しくなるくらいにドキドキした。



先生ってすごいね。

一瞬で、私を幸せにできるんだから。



今は、“直”って呼ばれている私。

でも、時々恋しくなる。



「先生~、矢沢って呼んでみて」

「ん?」


少し早く帰って来た先生が、ソファでコーヒーを飲んでいた。


「直はママになっても、変わらないな」

「だってぇ、春になると、高校時代のこと思い出しちゃうんだよ」


空は、先生の横に座り、ミニカーで遊んでいる。

先生に似て、少しくせ毛。


「矢沢ぁ~、ちょっと甘いもの食いたい」

先生は私のツボを知ってる。

腕組みして、ちょっと怖い顔をしながら、そう言った先生に、ドキドキしちゃう私。


「はい」

チョコを手渡すと、その手を握ろうと引っ張る。


「矢沢、俺と一緒にチョコ食べよう」

「先生っ!」



全くおかしなふたり。

こんなバカなことをしているパパとママを見て、空は嬉しそう。

先生の真似をして、私の腕を引っ張ろうとする。



大好きなふたりに引っ張られる私、幸せすぎる。


< 8 / 173 >

この作品をシェア

pagetop