白いジャージリターンズ~先生と私と空~

先生の癖は、誰よりも知ってるよ。


腕を組んで、片足に重心を置いて立つ。

困ったように眉を下げて笑う。

首の後ろを触る。

背筋を伸ばして歩く。


“新垣先生~!髪切ったの?”

“キャぁ~短くなってる!”


先生に憧れる女子の声を聞くたびに、私は心の中で叫んでいた。


“私の方がずっと先生を知ってる”って。


髪を切った先生は、いつも女子に囲まれていた。


“先生、今までで一番短いね”って私が声をかけることができたのは、髪を切って数日後だった。


“結構前に切ったんだぞ”って笑う先生。

そんなこと知ってるよ。
すぐに気付くに決まってるでしょ。

誰よりも先生を見ているんだから。
誰よりも先生のこと、大好きなんだから。


どこから来るのか、そんな自信。


心の奥では感じてた。

私の知らない先生。

私達の前で見せる顔は、先生の一部なんだってこと。


先生は誰かを愛している。

そして、愛されている。


私達は、ただの生徒。


わかってるんだけど、認めたくなくて・・・・・・

先生の特別になりたいって、思ってた。

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