残念御曹司の恋
「自分がちゃんと次に進んでもいいと思えるようになるまで、お見合いはしないつもり。ちゃんと働いて仕事もして、まずは結婚以外の自分の人生を生きてみようと思って。私が働けるところなんて、あるか分からないけど。」

勢いよく告げて、彼の瞳を見る。
大好きだった彼のそれが少しだけ困ったように揺れる。

「気にしないでって言っても無理だと思うけど。私、このまま一生ひとりでも構わないと思ってるの。結婚だけが人生じゃないし。誰か他の人を巻き込んでまで叶えたいものでもないし。」

だから、もうそんな困った悲しい顔はしないで欲しい。
少しでも、彼の笑顔が見たくて、私は言葉を続けた。

「だから、どうか川合さんも遠慮せずに好きな人と幸せになって。とか言ってて、家にかわいらしい奥さん連れてきたら、少しくらい意地悪しちゃうかもしれないけど。」

ふふっと笑って付け足した。
気の利いたジョークではないけれど、これが今の私の精一杯だ。
彼も笑ってくれるだろうか、そう思って顔を上げたけれど。

彼は全く笑ってはいなかった。

その瞳は、むしろ、今まで見たことがないくらい怒っているように見えた。
< 106 / 155 >

この作品をシェア

pagetop