残念御曹司の恋
その日の夕方、外回りに出ていた俺に木下から連絡が入った。
「うちの新人ちゃん、泣かしてくれたらしいじゃん。」
嫌みのような一言だが、木下の声は明るかった。
「別に泣かせたかったわけじゃないけど、言い方がきつかったのは謝るよ。戻ってから平気だったか?」
「ええ、大丈夫よ。少し仕事のアドバイスして、一緒にあなたの悪口言ったらケロッとしてたわ。たぶん、次は大丈夫だと思う。」
「俺の悪口には、事欠かないからな。」
「ふふっ、自分がセンスない癖に何様だって言いながらプラン考えてたわ。」
どこまでが本当の話かは分からないが、あまり心配はなさそうだ。
「その性格の悪さまでちゃんと後輩に引き継ぎしとけよ。」
「ごめんね。今、ちょっと仕事が立て込んでて、後輩まで気が回らなくて。」
木下が素直に謝るということは、よほど忙しくて余裕がないのだろう。
それが分かったから、俺も早く会話を切り上げた。
「別にいいよ。次も頼む。じゃあ、またな。」
「はいはい、いつも言うけど早めに依頼してよね。」
通話を終了する前に、ふと思いついた一言を滑り込ませた。
「木下、いつもありがとな。」
言い逃げするように、慌てて電話を切ったので、ちゃんとあいつに聞こえたのか、どんな反応をしたのかは分からない。
でも、素直な気持ちを言葉にした俺はとても清々しい気分だった。
だから、まるで思い至らなかったんだ。
このとき、木下がどんな気持ちでその言葉を受け止めていたかなんて。
「うちの新人ちゃん、泣かしてくれたらしいじゃん。」
嫌みのような一言だが、木下の声は明るかった。
「別に泣かせたかったわけじゃないけど、言い方がきつかったのは謝るよ。戻ってから平気だったか?」
「ええ、大丈夫よ。少し仕事のアドバイスして、一緒にあなたの悪口言ったらケロッとしてたわ。たぶん、次は大丈夫だと思う。」
「俺の悪口には、事欠かないからな。」
「ふふっ、自分がセンスない癖に何様だって言いながらプラン考えてたわ。」
どこまでが本当の話かは分からないが、あまり心配はなさそうだ。
「その性格の悪さまでちゃんと後輩に引き継ぎしとけよ。」
「ごめんね。今、ちょっと仕事が立て込んでて、後輩まで気が回らなくて。」
木下が素直に謝るということは、よほど忙しくて余裕がないのだろう。
それが分かったから、俺も早く会話を切り上げた。
「別にいいよ。次も頼む。じゃあ、またな。」
「はいはい、いつも言うけど早めに依頼してよね。」
通話を終了する前に、ふと思いついた一言を滑り込ませた。
「木下、いつもありがとな。」
言い逃げするように、慌てて電話を切ったので、ちゃんとあいつに聞こえたのか、どんな反応をしたのかは分からない。
でも、素直な気持ちを言葉にした俺はとても清々しい気分だった。
だから、まるで思い至らなかったんだ。
このとき、木下がどんな気持ちでその言葉を受け止めていたかなんて。