残念御曹司の恋
彼はコーヒーを一口飲むと、再び口を開いた。

「俺が君のことを知ってるのと同じで、君も俺のことをよく知ってるはずだ。」

「ええ、まあ。」

「多分、俺達の関係のことも知ってるんだろう?」

そう尋ねられて、今度は静かに首を縦に振った。

「そして、多分、俺はあまり君にはよく思われてない気がするよ。」

私はそれについては肯定せずに、代わりに質問する。

「お見合いでご結婚されるとお聞きしましたけど、今更、姉に何の用ですか?」

語気を強めて尋ねた私に対して、彼はやっぱりなという顔をして、意外な言葉を口にした。

「結婚はしないよ。」

彼の顔が切なく歪む。
その表情に、見ている私も胸が締め付けられる気がした。

力なく笑った後、彼は意を決したように私を見つめ直した。

私はすでに驚いていた。
この後、彼が何を告げるのか、簡単に予想できてしまったから。




「君のお姉さんを愛してるからね。」

彼の瞳は、姉が愛する人の話をする時に見せるそれと、とてもよく似ていた。
< 45 / 155 >

この作品をシェア

pagetop