残念御曹司の恋
それから彼が語ったのは、驚きの事実で。
彼の言葉は、切なくなるくらいに、姉への愛に溢れていた。

「だから、俺は司紗に何が起きたのか知りたいし、力になりたい。気持ちも伝えて、出来ればすぐにでも連れ戻したい。」

最後まで聞く頃には、私の肩の力がすっかり抜けていた。

姉が彼の愛に気づかなかったように。
彼もまた姉の愛を知らないのだ。

なんて、滑稽だろう。
すれ違いもここまでくると、コメディーの域かも知れない。
私は無性におかしくなったのを堪えきれずに、ふふっと声を漏らした。

「何か、おかしかった?」

不思議そうに見つめる彼に、私は慌てて弁解した。

「いえ。姉のことをこんなに思ってくれる人がいて、うれしかっただけです。」

あくまで、姉の思いは姉のものだ。
私が勝手に伝えていいわけがない。
同様に、彼にも直接姉に伝えてほしい。

そのためには。

私は、意を決して口を開いた。


「姉の居場所を教えます。…ただし、一つだけ条件があります。」

向かいに座る彼の顔が、明るくなった。条件付きでも、とにかく私から姉の情報を引き出せそうなことに安堵しているようだ。

私は自然と強ばっていた顔の筋肉を少しだけ弛める。


「必ず、姉のこと連れて帰ると約束してください。」

< 46 / 155 >

この作品をシェア

pagetop