残念御曹司の恋
「ごめんなさい。」
私は彼の揺れる瞳に向けて、謝った。
彼にここまでさせたのは、他でもない私なのだ。
「何に対して謝ってる?」
彼の瞳がより一層悲しげに問いかける。
「急に何も言わずに居なくなったこと?嘘を付いてたこと?それとも、俺のまだ知らない何か?」
私はすぐには答えられなかった。
私が一番謝りたいのは。
あなたを好きになったこと。
そして、10年もそれを隠しながら、あなたの側に居続けたことだったから。
それでも、話さなくてはと思った時、痺れを切らして口を開いたのは彼だった。
「俺、ショックだったよ。ずっと側に居たのに、司紗が何考えてるのか、何にも知らなかったんだなって。何に悩んでて、どうして居なくなったのか分からなくて。一言も相談されないなんて、俺ってそんなに信頼されてなかったのか。司紗にとっては、本当に体だけの関係でつながってただけだったのかと思ったら、無性に情けなくなった。」
そう打ち明けた彼は、私から目をそらしてうなだれた。
「俺ってほんとに残念な男だな。」
ぽつりとこぼした一言に、私は胸が締め付けられるように痛んだ。
どんなに見た目が残念だと揶揄されようとも、彼は一度だって自分の内面を卑下したことはない。
彼の自信に満ちた瞳を奪ったのが自分であることが、ひどく堪えた。