極甘上司に愛されてます


一気に全身が熱くなる中、ゆっくりと唇の熱が離れて行くと、ふうと息を吐き出した彼が、苦笑しながら言う。


「……離れ難いのはお互い様だ。けど、最初から飛ばすと疲れるぞ? 今夜と明日はゆっくり休んで、明後日また元気な顔見せてくれ」

「は……はい」


コクコクと頷きながら、耳の奥ではずっと“離れ難いのはお互い様”――というセリフばかりがリピートされる。

前々から思ってたけど、編集長って、結構恥ずかしいこと、サラッと言うよね……

まだお子様の私には、ちょっと刺激が強い……


「じゃーな。おやすみ、亜子」


――――ドキ。

い、い、今……ああ、あこって言いました……?

心の中で質問してみても、編集長の背中は遠ざかって、階段の方へ消えていく。

私が亜子ってことは、編集長は、透吾なわけで……


「おやすみなさい……と……と……とうご」


たった今バイクが走り去る音は聞いたし、アパートの通路に私だけがぽつんと佇んでいるから、聞いている人なんていない。

それなのに一人で呟いた彼の名前に盛大に照れた私は、沸騰しそうな顔を両手で押さえ、胸の中で「きゃぁぁぁ」と黄色い声を上げながら悶えていた。


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