極甘上司に愛されてます
一気に暗い気持ちになって落ち込んでいると、部屋から出て行こうとしていた石神さんが何かを思い出したように戻ってきて、編集長の前で立ち止まる。
……え。まさか、もうばれてるとか、そんなわけないよね……?
漂う不穏な空気に、胸がざわざわと乱れる。
それに、男の人なのに“キレイ”という形容詞の似合う石神さんと、“男らしい”を絵に描いたような編集長……
タイプの違うイケメン二人が対峙している姿は何かとてつもない迫力があって、ハラハラしながら成り行きを見守っていると。
「もうひとつ、この規則を破りそうなのはあなたくらいなので、忘れていましたが――」
石神さんが、そんな前置きをして編集長を見つめる。
どうやら私たちの関係が気づかれたわけではなさそうだけれど、一体……
「――バイク通勤は危険なので、今後一切しないで下さい」
笑顔で、けれど冷ややかに言った石神さん。
そんな彼に、編集長は顔色を変えず、ただ一言「……わかりました」と言った。
……確かにバイクは乗り方によっては危険かもしれなし、通勤に使うのには似つかわしくないかもしれない。
だけど、編集長しか乗っていないことを知っていながら、こんなみんなの前で見せしめみたいに言うなんて、ひどいんじゃない?
それこそ、下々の者がいないところで言えばいいのに……!
敵意をむきだしにして石神さんを睨んでも、彼は涼しげな顔のままで今度こそオフィスを出て行く。
そうして出入り口の扉が閉まり彼がこの空間からいなくなると、皆張りつめていた緊張の糸が切れたのか、いくつものため息があちこちから聞こえた。