極甘上司に愛されてます
――私語禁止令が尾を引いて、非常に空気の悪いオフィス内。
女子社員の方は社長に指示されていた仕事を早々に終え、皆各々の作業をしているけれど、少し椅子がぎし、と鳴っただけの音でも目立ってしまうこの静けさに、逆に集中力を削がれる。
いつもなら、もっと気軽に意見交換してるのにな……
そんなことを思いながらかちかちとパソコンで文字を打っていると、営業部の方からスタスタと私のデスクに近付いてきた人物が。
「亜子ちゃん、一緒にお昼でも行かない?」
静寂の中でも凛とした声を響かせたのは、先程専務代理に対して勇気ある発言をしていた理恵さんだ。
お昼……か。もう一時を過ぎているし確かにお腹は空いているけど、なんだか休憩を取りづらい雰囲気。
まだ外では男性陣が瓦礫の片づけをしているし、そんな中で私たちだけ……っていうのは、気が引ける。
「……心配しなくていいわよ、今ウチの部長から連絡があったの。こっちのことは気にしなくていいから、女子社員は休憩取れそうなら取りなさいって。ついでに、彼らのために手軽に食べられそうなものでも買ってきてあげましょう」
「そうなんですか。それなら……」
「……今日ばかりは外で食べたいのよね。ここじゃ安心してあの専務の悪口言えないし」
「り、りり理恵さんっ!」
口元に人差し指を立てて見せるけど、編集部の皆の視線は理恵さんに集まる。
そして彼女に触発されたかのように、みんなぽつりぽつりと口を開きだした。