極甘上司に愛されてます
『ごめんなさい、お待たせして』
コト、と目の前に置かれたのは紅茶のカップ。
湯気とともに立ち上る香りは爽やかで、これを飲めば体が活力を取り戻すかもなと思い、遠慮なく口をつける。
するとテーブルを挟んで向かいに正座した美緒が、とんでもないことを言い出した。
『……無理を承知でお願いします。お腹の子の、父親になってくれませんか?』
『――げほっ! じ、冗談はやめてください』
紅茶が気管に入ってむせかえる俺に、美緒は真剣な目で詰め寄ってくる。
『私、本気です……! 高槻さんのような優しい方に、父親になって欲しいんです』
『……今日、少し言葉を交わしただけの相手にそんなこと言っちゃダメです。俺が優しいかどうかなんて、まだわからないじゃないですか』
『わかります……! あなたは、あの人とは違う』
あの人……もしかして、お腹の子の父親か……?
彼女を見ると、その瞳は俺の背後にある壁の一点をじっと見つめている。
そこに何が……?
振り向くと、一枚の絵が額に入れて飾ってあった。
モチーフは、ベッドで眠る女性の寝顔のようだ。
微笑むように目を閉じて、そこに朝陽のような柔らかい光が当たっていて……これを描いた人は、絵の中の彼女に深い愛情があるのだろうと伝わってくるような、優しい絵。
『これは、美緒さん……?』
『……ええ。彼が描いてくれたの』
彼、か……思った通りだ。