極甘上司に愛されてます
『上手いですね。“彼”は芸術関係の人なんですか?』
『そうよ。才能に溢れた素敵な人。……だから……妊娠のことなんて、話せるわけがないのよ。何かに縛られることがキライな人だから』
芸術家気質ってやつか……?
でも、自分の子供のことを知らずにいていいとは思えない。
『彼だって美緒さんを愛してるんでしょう?』
『……いいえ。私は、彼に言い寄る数多くの女性のうちの一人でしかないのよ。もしかしたら、寝たことだって忘れているかもしれない』
『そうでしょうか。この絵を見る限り……』
もう一度背後の絵の方を振り返ると、急に頭がぼんやりしてきて、目の前の景色が二重になって揺れた。
なんだ、これ……? いきなりとてつもない眠気が……
『……高槻さん?』
『すいません……やっぱり帰らせてもらい、ま――――』
津波のように押し寄せてきた睡魔にあっという間に飲みこまれた俺は、ゆっくり床に倒れ込む。
かすむ視界が最後にとらえたのは、壁にかかる絵の端に記されたサイン。
どこかで見たことがあるような気がする……でもどこで、だったか……
そう思っても記憶をたどっている暇などなく、俺はほどなく意識をなくした。