極甘上司に愛されてます
「……行こう、小林風人のところ」
「でも……」
「アンタとのことにケリをつけないと、俺も北見を迎えに行ってやれない。……だから、さっきは追いかけなかったんだ」
追いかけなかった理由……それを知った美緒は、恐縮したように身を縮ませる。
「…………ごめんなさい、私のせいで」
「今さら謝られても遅せぇよ……つーのは嘘だけど。大丈夫だ、俺たちはこんなことじゃ壊れねぇ」
冗談交じりに言った俺は、腕時計を確認して言う。
「……どこかで待てるか? まだ片づけなきゃいけない仕事がある。六時過ぎに待ち合わせよう」
「わかった……その時間になったら、電話する」
どうやら腹を決めたらしい美緒の瞳は、ぶれることなく俺を見ていた。
こうなったら、美緒にはあの画家と幸せになって欲しいと思う。
……ただ、あの画家の女好きは北見が身をもって証明している。
会いに行っても、自分が美緒のお腹の子の父親だと認めるかどうか、不安が残るが……
美緒の部屋にあった絵を見る限り、小林風人の方にも、愛情がなかったとは思えない。
自分の子供の存在を知って、変わってくれるのを信じるしかない、か――。
そんなことを考えながら編集部に戻ると、自然に目が行くのは北見のデスク。
そこには真剣にパソコンを覗いて仕事をしているらしい彼女の姿があって、とりあえずほっとしながら自分の席に戻る。
そういや、北見が去り際に“見て欲しい企画書がある”とか言ってたな……
机の上にはいくつか書類が提出されていて、その一番上にあった企画書を手に取り、ぱらぱらと捲ってみる。