極甘上司に愛されてます


「馬鹿みたいに信じてるのね……彼女の、どこがいいの?」


ここへ来て、美緒が初めて話の矛先を変えてきた。

簡単には捨てられない想いというものに、彼女自身心当たりがあるせいかもしれない。


「どこが……? そうだな、しいて言うなら……仕事にも恋愛にも、不器用で必死なところか。それ以外にも挙げたらきりがないが……」

「……聞くんじゃなかった。惚気を聞かせろと言ったわけじゃないのに」

「それは悪かったな。じゃあ、逆に聞く。……アンタは小林風人のどこを?」


俺の言葉に、美緒は難しい顔をして考え込んでしまった。

投げかけた問いは、決して難題なんかじゃない。

あの部屋に、大事そうに飾ってある絵を見たら、誰だってそれがわかる。

認めたくないだけで、彼女の胸は答えを知っている。


「……理屈で考えたら、いいところなんてないのに」


やがて、消え入りそうな美緒の声が、彼女の中に積もった想いを、吐き出していく。


「自由奔放で、女好きで、つかみどころがなくて、絵を描くこと以外、自分のことは何もできなくて」


全く、しょうのない画家だな……美緒の話を聞きながら、そう思ってしまう俺だけど。

恋に落ちた人間に、客観的意見ほど役に立たないものはない。

そんなことは重々承知のうえで、それでも心が相手を求めて止まらない。

……それが、恋に落ちるということだから。


「なのに……どうしても、忘れられないの。あの朝、私が目を覚ました時に、嬉しそうに寝顔のスケッチを見せてきたあの人の笑顔が」


やっと、自分の気持ちを認めた美緒。

伏せられたその瞳から、きらきらと輝く雫が、頬を伝って地面に落ちる。



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